マツダ技報 2022 No.39
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(2)各シーンに応じた最適配置 CX60のADDでは,通常運転時とマツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(以下,MRCC)やクルージング&トラフィック・サポート(以下,CTS)などの運転支援システムを作動させている状態では,表示する情報の配置に変化を持たせている。通常運転時であれば,ドライバーは自らアクセルペダルとブレーキペダルを操作する。そのため,安全な車速を維持するために現在車速の視認頻度が最も高いと考える。一方で,MRCCやCTS作動時には,ドライバーが自ら設定した車速や先行車との車間距離に応じて,車速は自動制御される。そのため,ドライバーにとって現在車速の重要度は低下し,システムが制御するために必要な周辺環境のセンシング情報がより重要となる。 よって,通常運転中は現在車速を最小な視線移動で視認可能な中央に表示し,MRCCやCTSを使用している際には,センサーが検知している周辺情報や設定車速情報を中央に表示することにした。この表示の具体的な例をFig. 4,5に示す。これによって,ドライバーは車両の制御状態をより直感的に認識でき,シーンごとに情報視認時間の最短化を実現した。―123―2.1 高画角ADD(1)ADDの進化について マツダのADDは,2代目MAZDA CX5よりフロントウィンドウ投影型を採用している。ADDの表示エリアの大きさは,見た目上の画面の大きさを表す指標である画角が用いられる。画角についての説明図をFig. 1に示す。スモール商品群(MAZDA3等)のADDは画角が2×5°(Fig. 2),CX60のADDは画角が3×10°(Fig. 3)となっている。CX60の表示エリアは,スモール商品群比で3倍広い。この拡大した表示面積を最大限に活用した,ADDのHMIについて紹介する。ADDは,走行中にリアルタイムで情報の更新が必要な「走行情報」を表示するデバイスと位置付けているため,運転中に適宜確認する情報を多く表示している。CX60では,より認知性/瞬読性を向上させるために,表示レイアウトを再構築した。具体的には,「最適配置」「表示のグルーピング強化」と「表示サイズの適正化」を行った。 以下,詳細について述べる。Fig. 1 Image of Angle of View2. HMIの進化Fig. 5 ADD Display in ADAS Information ModeFig. 2 MAZDA3 ADD DisplayFig. 3 CX60 ADD DisplayFig. 4 ADD Display in Normal Modeト開発を行ってきた。またマツダは,今まで表示デバイスのコントラスト(表示部と背景部の輝度比)向上や,情報を明確に分けてゾーン配置するなど,人間が生物としてもつ「人間特性」を考慮することで認知性/瞬読性の向上も図ってきた。この人間特性は,人間が共通でもつ領域と個々人で異なる多様性をもつ領域に分けられる。CX60のHMIは,共通領域は今までの技術をベースに更に進化させ,新たに多様性領域にも積極的に対応することで,より一層クルマに乗ることを楽しみ,また,モードや状況に応じて最適な表示を行う状況の最適化も考慮し開発することで安心感と満足感を高めた。これは,搭載するHMIデバイスがもつ「表現の自由度」を向上させることで実現した。具体的には,スモール商品群よりも更に高画角化(表示エリアを拡大)したActive Driving Display(以下,ADD)と,表示面を全て液晶ディスプレーとする「フル液晶メーター」を採用した。本稿では,CX60に採用したADDとメーターの進化ポイントを紹介する。

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