マツダ技報 2022 No.39
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➁ ユニット構造での取り組み モーターが内蔵されていない側のユニットに関して,モーター内蔵側と同じ荷重応答が出るように,スプリングとスクリュー/ナットの基本構造は共通にした。また,モーターの代わりとして,モーターコギング抵抗と同程度のフリクショントルクを発生することができ,小型化が容易で高耐久なコイルスプリング式のフリクションユニットを採用した(Fig. 5)。フリクションユニットは金属摺動で,温度影響を受けにくい強みがあり,さまざまな環境下で荷重応答差が拡大しないようにした。(3)急緩の速度制御 ねらいの急緩速度制御を加える場合,加速初期から定常速度に移行する際の速度変化が大きくなり,定常速度移行時,すぐに速度収束しないこと,また,全開位置に向けてゆっくり止めようとすると全開停止位置のずれや,ばたつきが目立ちやすい。それらを発生させないよう,モーター特性を踏まえた出力調整や,緩やかに停止させる抑制制御を追加し,お客様が心地よいと感じていただける急緩制御を実現した。3.2 ハンズフリーとトーイングヒッチの両立 ハンズフリーリフトゲートとトーイングヒッチの両立を実現するために,装着位置が重なる問題の解決が必要である。トーイングヒッチの箇所でハンズフリーセン―130―Friction Unit Fig. 3 Moment of Lift GateFig. 4 Structure of Lift Gate Shell (Inner)Fig. 5 Structure of Power Lift Gate Unitトによってコントロールができる。荷重を下げるために,ヒンジ中央からパワーリフトゲートユニット間距離Lを大きく取り,相反する開度保持のための反力モーメントを確保しつつ,パワーリフトゲートユニットから加わる荷重を小さくした(Fig. 3)。エクステリアデザインに関わる内容のため,開発早期に必要要件を明確にして確定させる必要がある。3Dデータがない状態でケーススタディを早期に実施して必要要件を出すことができる机上検討モデルを活用し,解決に導いた。 また,デザインとの共創で,外装樹脂部品の削減による軽量化を行い(従来モデル比で単位面積当たり9%低減),荷重を低減した。軽量化により,安心・安全で快適に使用していただけることにつながる保持力,及び手動操作力にも有利な方向に寄与している。➁ 制御での取り組み 安心・安全のため,電動作動時,物が接触する等で一定以上の負荷がかかると停止させる。その後,接触し続けることを回避するため,反対方向に一定量作動して,最終停止する制御としている。反転作動する際,モーターは一時的にブレーキがかかる状態になり,その際,外部から入力荷重がかかると,片側が突っ張ることになり,特定の箇所に負荷が集中することにもなる。そのため,ブレーキがかかる時間を最小化する必要があるが,速やかに停止・反転する作動に影響を及ぼさない点を追求し,ブレーキがかかる時間を短縮した。(2)リフトゲートシェルにかかる荷重の左右均等分配➀ リフトゲートシェル構造での取り組み リフトゲートシェルに荷重が加わった際,シェルが捻じれると,特定の箇所に負荷が集中してしまうため,剛性を確保して均等に荷重を伝達させることが大切である。 まず,剛性の寄与が高い取り付け部箇所にて,取り付け面剛性向上のため,荷重が加わる向きを考え,効果が高い引張/圧縮方向で荷重を支えられるよう補強部材を配置した。 次に,エクステリアデザインとインテリアデザインで挟まれた制約のある空間内で,机上検討モデルを使ってデザイン・関連部品と要件が成立する点を早期に発見することで,外周骨格を連続して配置でき,ヒンジとユニット取り付け部にかかる入力荷重を「連続体」にて途切れなく伝達させた(Fig. 4)。その結果,剛性を従来モデル比20%向上させた。

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