マツダ技報 2022 No.39
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―5―縦置き方式を採用し,理想的な前後重量配分によって,四輪のタイヤの性能を最大限に発揮しやすくした。更に,後輪駆動ベースならではのAWDにより,走行状況に応じた緻密な制御により,四輪のポテンシャルを使い切り,動的性能を大幅に引き上げた。サスペンション方式は,フロントはダブルウイッシュボーン,リアはフルマルチリンクを採用し,タイヤが上下に動く方向を揃えることで,初動からスムーズにストロークし,クルマの曲がる力にキャビンがシンプルな動きで追従する,人の操作に安定してシンクロするクルマを実現した。人の操作に対するクルマからのフィードバックの遅れを徹底的に小さくすることにより,クルマがまるで体の一部になったかのようなドライビングフィールを実現している。3.2 KV#2 安心安全 マツダの考える“走る歓び”は安心/安全の礎の上に成り立っている。さまざまな運転環境において,ドライバーの認知・判断・操作をサポートすることで,危険な状況に陥ってから対処するのではなく,危険自体を回避し事故のリスクを最小限に抑える,これがマツダの安全思想「MAZDA PROACTIVE SAFETY」である。“人間中心の設計思想”によって,最適なドライビングポジション,アクセルやブレーキの適切な配置,意識することなく知りたい情報をいつでも確認できる視認性の良さ,そしてそれらを人間の特性に合わせるといった,一つ一つの性能を徹底的に磨きあげることで,疲れにくくし,安心/安全に運転を存分に楽しんでいただけるクルマづくりを目指した。(1)ドライバー・パーソナライゼーション・システム ドライバー・パーソナライゼーション・システムは,自動ドライビングポジションガイド,自動設定復元,乗降支援の3つの機能から構成している。自動ドライビングポジションガイドは車内のカメラによって目の位置を検出,ドライバーの身長入力より計算しマツダのドライビング思想に基づく理想的なシートポジションに自動調整する。この調整と同時に,ステアリングとHUD,アウターミラーの角度も目の位置に合わせて自動調整を実現する。データは車両に記憶されており,ドライビングポジションを含む約200点の調整/設定項目を顔認識で読み出すことができ,ドライバーが変わってもすぐに自動設定復元する機能を備えている。更に乗降支援機能としてドライバーが乗り降りしやすいように,ステアリングとシートを自動でスライドさせる。これにより,誰でも,いつでも,そして簡単に,理想的なドライビングポジションの調整ができ,走り出せばすぐに“走る歓び”を体感できる。(2)ドライバー異常時対応システム ドライバー異常時対応システム(DEA DRIVER EMERGENCY ASSIST)は,ドライバー・モニタリングと連動し,ドライバーの異常を検知すると,音と表示でドライバーに警告し,注意を促す。ドライバーが運転に復帰できない場合には,ハザード点滅,ブレーキランプ点滅とホーン吹鳴で車外に異常発生を報知しながら,高速道路/有料自動車専用道路では可能な限り路肩に寄せながら減速停止※,一般道では同一車線内で減速停止することにより,事故の回避・被害低減を図る。停車後は,ドア解錠やヘルプネット自動接続による救命要請も行い,早期のドライバー救護・救命に寄与する。※ 路肩に寄せながらの減速停止には、ナビゲーション用SD カードの挿入が必要になります。(3)シースルービュー(新世代360°ビュー・モニター) シースルービューは,駐車場や細い路地といった狭い場所において低速で走行する際でも,周囲の状況をしっかりと確認できるよう360°ビュー・モニターの機能を一層進化させたシステムである。画面上にドライバーのアイポイントからクルマを透かして見えるような映像を映し出すことを可能とし,ドライバーが見たい場所をより自然に,直感的に確認することができる。 <シースルービュー 3つのポイント> 1. ぶつかるかもしれない対象を素早く見つけられる。 2. ぶつかるかもしれない対象が何かが分かる。 3. このまま進むとぶつかるかぶつからないかが分かる。3.3 KV#3 デザイン CX60のデザインのコンセプトは,“Noble Toughness”。ミドルクラスのSUVがもつ強さと,マツダの魂動デザインの知性とエレガンスを両立させる考え方である。(1)エクステリア・インテリアデザイン CX60のエクステリアデザインで一番大事にしたのは,“走りの良さがしっかりと伝わる骨格の表現”である。鍛え抜かれたアスリートの身体のように,ひと目見て,その運動性能の高さを感じ取れる,しなやかさで,力強い骨格を表現した。堂々としたその骨格の上には,シンプルなデザインテーマを,奇をてらわず,「美しさの正統」を表現した。 インテリアデザインも,空間構成の強さ,縦置きレイアウトならではの魅力が強く感じられるデザインとしている。車幅を存分に生かしたワイドなインストルメントパネルとコンソールは,“贅沢さと安心感”を感じさせる(Fig. 3)。(2)個性豊かな世界観 お客様の多彩なライフスタイルニーズに合わせて選んでいただける,個性豊かな世界観を表現するトリムバリエーションを用意した。量販価格帯では,使えるSUVを表現したGallantとActiveを,高価格帯には,個性が際立つモダンさとスポーティーさを表現したPremium ModernとPremium Sportsを用意した。

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