マツダ技報 2022 No.39
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―140―Fig. 1 Rhodium White Premium Metallic2. マツダの塗装の取り組み(2)3. 実現に向けたカラー開発Fig. 3 Technology Expansion to Sophisticated Color3.1 開発ターゲット 魂動デザインの進化にあわせて新たに提供したいロジウムホワイトプレミアムメタリックの価値として,「金属質感と白さの更なる進化」を開発ターゲットとした。また,「お客様が車を見たときに感じていただきたい質感表現」を,以下のように定めた(Fig. 4)。➀ 白くなめらか➁ 緻密な金属感➂ 艶やかな潤い 特に,➁の「緻密な金属感」については「粒子感がなく,面で金属的に輝く」というマシーングレープレミアムメタリックと共通の質感表現をターゲットとしている。更に,これまでの高意匠カラーと同様に塗膜数を増やすFig. 2 Process Transition of Topcoatながら進化を続けている。この中で,カラー開発は「カラーも造形の一部である」という考え方の基に進めてきた。2012年にはマツダが歴代こだわってきた赤色について「鮮やかさ」と「深み」を両立させた「ソウルレッドプレミアムメタリック」を,2016年にはスカイアクティブテクノロジーなど「マシーンの美学の追求」というマツダのヘリテージの表現として「緻密な金属質感」と「深み」を両立させた「マシーングレープレミアムメタリック」を市場導入した。更に,2017年には「鮮やかさ」と「深み」をより進化させた「ソウルレッドクリスタルメタリック」を市場導入した(1)。今回,魂動デザインの進化にあわせて新たな価値をお客様に提供するカラーとして,ロジウムホワイトプレミアムメタリックの開発に着手した(Fig. 1)。 自動車塗装は,電着・シーラー・中塗・上塗などの多様な材料の塗布と焼付乾燥を繰り返した複層膜で構成される。このため,塗料中に含まれるシンナーなどの揮発性有機化合物(以下,VOC)の排出や,常時温湿度をコントロールしている塗装ブースなどの塗装設備で多くのエネルギーを消費(CO2排出)している。マツダの車両工場から排出するVOCの95%,CO2の60%を塗装工場が占めており,塗装工程の環境対策は非常に重要な課題である。 この課題に対して,マツダでは継続的な環境対策に取り組んでいる。2002年には中塗工程を上塗工程に集約し,中塗の塗装ブース及び乾燥工程を削減したスリーウェットオン塗装を開発,導入した。更に2009年には,中塗の塗膜機能を上塗に統合することで中塗工程を削減し,VOCとCO2を同時に削減可能な世界トップレベルの環境性能をもつアクアテック塗装を開発し,現在は各工場に水平展開を進めている(Fig. 2)。 アクアテック塗装は,各材料の機能を高めることで塗膜に必要な機能を集約している。中塗が担っていた耐チッピング性などの機能を高機能なベースコート層,クリヤコート層に分配,集約することで中塗層を削減可能にしている。 また,工程面においては,各工程に求められる機能を高めることで省エネルギー・省スペースを実現している。つまり,材料・工程いずれも必要な機能を定義して,その機能を高めながら集約している。 カラー開発においては,スリーウェットオン塗装やアクアテック塗装で培ってきた材料設計,機能設計及び塗膜設計技術を活かして一層ごとの塗膜の機能を高めることで,塗膜数を増やすことなく意匠性と生産時の環境性能を両立させながら,技術を積み上げてカラーを進化させてきた(Fig. 3)。

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