マツダ技報 2022 No.39
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―141―3.3 塗膜構想 ねらいの光学特性を実現するため,塗膜内に入射する光の経路に沿って,各塗膜層の機能を構想設計した。具体的には第1ベースコート層を拡散反射層,第2ベースコート層を正反射層に機能分担した構想とした(Fig. 7)。3.4 シミュレーション技術の活用 次に,塗膜構想を実際の塗膜構造に反映するプロセスに進む。従来は,実際に多数の試作(イメージ板)により,評価と修正を繰り返し,最後はデザイナーの感性で塗膜構造を決定していた。今回の塗膜構造設計においては,モデルベース開発の考え方を取り入れ,光学シミュレーション技術を用いて,ねらいの光学特性を達成する塗膜中の制御因子を確認した。その結果,「輝き」と「白さ」の制御因子が光輝材であるアルミフレークの「大きさ」と「隙間」であることを確認できた。「輝き」重視の意匠の場合はアルミフレークを大きくする,もしくはフレーク間の隙間を狭くすることが有効で,「白さ」重視の意匠の場合はアルミフレークを小さくする,もしくはフレーク間の隙間を大きくすることが有効である(Fig. 8)。Fig. 8 Confirmation of Control Factor by Simulation シミュレーション結果から,アルミフレークの大きさと隙間をコントロールした試作(イメージ板)を最小限作製し,その中からカラーデザイナーの感性により最終カラーを決定した。これにより,デザイナーの意図を机上でつくり込むことが可能となり,作製数も劇的に削減することができた。また,制御因子をあらかじめ明らかにすることで,技術的課題がより早期に明らかになり,これらのことからも開発の効率化が可能となる(Fig. 9)。Fig. 4 Target Image of Rhodium White Premium 3.2 カラー開発プロセス カラー開発は,デザイン部門,開発部門,生産技術部門が順番に業務をバトンタッチしていく従来のプロセスではなく,デザインや社内各部門の技術者と塗料サプライヤーが一同に集まり,材料開発と生産技術開発を同時に行う「TAKUMINURI開発プロセス」を取り入れてきた(Fig. 5)。Fig. 5 Transformation of Color DevelopmentFig. 6 Conversion to Optical CharacteristicsMetallicFig. 7 Conversion to Film Structureことなく,他色と同じ生産工程で意匠性と環境性能を両立させることを前提とした。 これはデザインの意図を関係者が理解し,それを技術者が共有できるよう光学特性に変換し,塗膜構造の決定と並行して技術開発を進めていくプロセスである。今回も提供したい価値から表現したい特性を定義し,光学特性に変換した(Fig. 6)。

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