マツダ技報 2022 No.39
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(2)アルミフレークの開発 シミュレーション結果より,アルミフレークの大きさが「輝き」と「白さ」の制御因子であることを3.4節で述べた。アルミフレークは粒径,粒形分布,厚み及び表面形状(平滑性)などのさまざまなパラメーターを有しているが,これらのばらつきを制御することが重要である。マシーングレープレミアムメタリックやソウルレッドクリスタルメタリックの開発を通じて培った高輝度アルミフレークの技術を進化させ,表面が平滑で,粒形分布が狭く,人間が車両を見たときに視覚分解できる限界サイズよりも小さなアルミフレークを開発した(Fig. 12,13)。(3)塗膜中のアルミフレークの配向制御 ねらいの光学特性を発揮するには,塗膜中のアルミフレークの配向を制御し,並行に配列させる必要がある。この制御には,正反射層である第2ベースの膜厚を薄くすることが有効である。また,溶剤や水分などの塗料中の揮発成分の蒸発を利用した「体積収縮効果」を大きくすることが有効である(Fig. 14)。―142―Fig. 9 Process of Decide to Final Film Structure3.5 技術的課題解決の取り組み 上記プロセスによって設計した塗膜構造を実現するための技術的課題は以下の4点である(Fig. 10)。 (1)第1ベースコートの平滑化 (2)アルミフレークの開発 (3)塗膜中のアルミフレークの配向制御 (4)塗膜中のアルミフレーク間の隙間制御Fig. 10 Technical Challenges of Rhodium White Premium MetallicFig. 12 Small and Smooth Aluminum FlakeFig. 13 More Uniform Particle Size Distribution of Fig. 11 Smoothness of Basecoat1Aluminum Flake 各層でねらいの光学特性を発揮するには,この塗膜構造を材料と工法(塗り方)で高精度に再現することが必要である。つまり,理想の塗膜を実現するために,塗膜の構造因子のばらつきを従来よりも高いレベルで制御することが必要である。各課題への取り組みについて以下に述べる。(1)第1ベースコート層の平滑化 正反射層にアルミフレークを配列させるためには,その下層である第1ベースコート表層の凹凸形状を制御し,平滑にすることが重要である。表面を平滑にするには,塗装時の塗料粒子を小さくし,積み上げていくことが有効であると考えた(Fig. 11)。塗装時の塗料粒子を小さくするには,塗装時の吐出量を少なくし,塗料を霧化させるために塗装機から与えられるせん断力を効率的に塗料に与えることが有効である。塗料中の固形分を従来よりも増やすことと,下地(電着膜層)への紫外線透過を抑制する能力を高め,膜厚を薄くすることを開発要件として塗料開発を行った。この結果,従来のホワイトパール色の第1ベースコート膜よりも約20%薄膜化した塗料を開発した。更に,塗料使用量が削減できたことで,環境への配慮にも対応できている。

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