マツダ技報 2022 No.39
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 Fig. 5に示すように,コンベアであれば部品容器もエンジンと横並びにレイアウトせざるを得なかったが,AGVを用いることで,作業者の横に部品容器を配置し,更にAGVを自転させることで部品容器の向きを任意に設定することができるため,部品取り出し性の向上にも大きく貢献した。―147―Fig. 5 AGV Layout(2)AGV要素動作パラメーター化 自在工程システムの操作性及び拡張性を確立するため,AGVの要素動作をパラメーター化した。要素動作として,走行/回転/リフター上下動作があるが,これらを走行経路や作業ゾーン,搬送物ごとに決められた固定の動作プログラムではなく,パラメーターとして動作を選択指示することで,機種追加や生産比率などに応じたレイアウト変更をプログラム変更レスで対応可能とさせた。更に,パラメーター化した要素動作を外部入力とすることで,生産状況に応じて短時間で工場スタッフによりレイアウト/作業編成を変更可能とした。(3)作業指示システムと締付ツール 自在工程システムは高効率フレキシブル生産を実現するために,2003年から内製で開発してきた作業指示システムを適用している。このシステムは,機種ごとに設定した作業手順とパラメーターに応じて,締付ツールや作業確認センサー等を制御しながら,機種ごとに異なる作業をナビゲートし,インターロックをとっていくシステムである(2)。また,今回,組立要素作業の締付けで使用する「手持ち締付ツール」は,AGV自在工程の柔軟性を最大限に生かすため,コードレスツールを採用し作業編成の変更に即時対応可能とした。従来は有線式のため,編成替えやレイアウト変更のたびに締付制御コントローラーとツールの移設が必要となり,PLCとの配線工事も発生していたが,編成替えの容易化を目指し,コードレス化にすることでツールの移動のみで実現した。 品質保証に関しては,これまでと同様に締付トルクだけでなく締付過程を締付波形判定することで作業間違いや部品不良などの異常を検出し,作業指示システムと連携させることで確実な品質管理を行っている。これらの効果として,工程追加変更投資32%削減,編成効率15%向上を達成することができた。3.3 自動化装置のフレキシブル度進化 エンジン組立ラインでは,“高い精度が求められる作業Fig. 3 Absorption of Work Time Di■erencesFig. 4 AGV Model Area しかしながら,生産する機種の追加や台数増に対しては,バイパスラインの延長/工程追加の改造工事を何度も実施し,大きな投資・準備工数を費やしてきた。更に,生産する機種が複数になると,バイパスラインの中での作業時間差も発生し,機種間の作業時間差を吸収する工程長さに限界があるため,機種比率の変動によって編成効率が悪化することがあった。これらの問題に対して生産環境の変化に柔軟に対応できるライン拡張性を持ち,複数機種の作業時間差を吸収できる工程を実現することが課題であった。その解決手段として「低床フレキシブルAGV」を活用した工程づくりの事例を紹介する。(1)自在工程システムの構築 エンジン組立工程で最も機種間の作業時間差が発生する最終ゾーンに対し,Fig. 4に示す柔軟性の高い工程を配置した。 本工程には機種間で共通の作業を行う「分業工程ゾーン」と「セル工程ゾーン」を設けた。分業工程は,既存コンベアと同様に“連続した工程”とすることで,複数機種間で編成効率を高く維持できる工程とし,複数設置したセル工程において編成効率を高く維持したまま,機種間における作業時間差を吸収する。AGVは将来,他領域や物流での拡張性を考え,市販されている物流用AGVをベースに,前述の治具パレットの考え方を適用し,エンジン搬送と部品搬送をそれぞれアタッチメントで対応することにより,1種類のAGVで複数の作業を可能とした。 また,従来のコンベアを適用した工程配置からAGVに変更することで,レイアウト自由度を高くすることができた。この効果はコンベアでは生産機種が増えるたびに改造工事を必要としたが,AGVではレイアウトの自由度が高いことに加え,分業工程とセル工程の工程数比率を変化させることで,機種追加・生産比率の変動への追従性が大きく向上した。

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