マツダ技報 2022 No.39
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(2)エンジンNo.刻印装置 マツダでの従来のエンジンNo.刻印は,テーキンによる打刻方式であり,大きな荷重がかかることにより機械的なバックアップ構造が必要となり,機種追加のたびに製品と接触する部分の設備改造が必要であった。また,刻印部位も強度が必要でFF車ではリア側の吸気面に統一されていた。リア側チェーン配置や長尺化,車載状態での周辺部品による視認性悪化の影響等により刻印位置の自由度が必要となり,マツダでは初となるドットペンでの刻印を品質検証,認証課題調整を行い採用した装置をFig. 7に示す。―148―Fig. 6 Valve Stem Seal Press-fit MachineFig. 7 Engine Number Engraving Machineや重筋作業にあたる作業は自動化する”を基本的な考え方としている。また,フレキシブル性の観点から動作変更のみで新機種対応できる設備仕様が必要条件である。これらの考え方からエンジン組立の作業の主要要素の中でも締付,シール塗布,検査についてはロボットを用いて自動化し,機種追加に柔軟な対応ができている。しかしながら,機種追加対応のたびに改造を伴うような装置が存在していることも事実である。今回ラインを新設するにあたり,そのようなフレキシブル性を向上させた設備事例を紹介する。(1)ステムシール圧入,コッター組付装置 シリンダーヘッドサブラインでのバルブステムシールやコッターリテーナーの組付けを自動機で行っているが,直4エンジンではバルブ角度が異なる機種など新機種が設定されるたびに製品のチルト角度を増やす改造を行い,調整に時間がかかっている装置となっている。これに対して,製品チルト角度を,サーボモーターを用いて可変にすることでバルブ角度が変更されても数値制御だけで対応できるようにしフレキシブル性を高めた。更に,従来,鉛直方向の動作は全軸をまとめて動作させていたが,各軸単独構造とすることで圧入必要数や圧入高さに対するフレキシブル性を向上し,直6エンジンだけでなく直4エンジンにも対応できるようにしている。直6エンジンと直4エンジンに対して圧入動作をしている写真をFig. 6に示す。必要軸のみ下降して圧入動作をできるようにし,フレキシブル性を向上させた。 ドット方式に変更することで,荷重が大幅に軽減され,バックアップ構造が不要になり,また多関節ロボットを用いて,位置/角度が変更されても容易に追従可能になった。今まで直4のFFエンジン用とFRエンジン用で3台の刻印装置が必要となっていた装置を1台に集約させた。更に今後は,ロボットにレーザーセンサーを付け加え,刻印の検査を行うとともに,刻印の品質に関わるドットペン先も管理することにより,最適なタイミングでペン先交換を行う予定である。(3)外観検査装置 複数機種の混流における課題は,機種ごとに異なる部品が正しく組み付けられていることを保証することである。従来は,部品ごとに専用の検査装置を設けていたが,種類が増えるごとに確認装置が増え対応に多くの工数をかけていたため,現在は,ラインの5か所に多関節ロボットに画像処理カメラとセンサーを持たせたフレキシブル性の高い外観検査装置を設置し,専用検査装置を設けずに外観検査装置にて仕様確認を行っている。今回のラインにも同様に外観検査装置を5か所に設置している。5か所の装置では組み付け順序上検査できない部位については作業工程に影響を与えないように協調ロボットを使用し省スペースでフレキシブル性を持たせる装置を展開している。4. 部品の大型化に対する作業工程の効率化4.1 部品大型化,重量増に対する組立工程の取り組み 直6エンジンではオイルパンなど従来直4エンジンでは手作業で組み付けできていた部品については,直6エンジンにおいては長尺化による重量増により,エルゴノミクス評価において,手作業は不可である。ロアブロックにおいても,軸力アップと長尺化により10kg以上の重量増となった。このロアブロックは,クランクシャフト等の内臓部品を組み付けるため,分解と組み付けの2回の作業が必要となる。作業者の身体的負担を減らすために組付補助装置を用いるが,作業時間増加を最小限にすべく専用治具を開発した(Fig. 8)。 エア制御で重さを感じることなく移動できる組付補助装置を用いているが,製品を把持しているとき/把持していないときの制御の切り替えをチャック動作と連動して自然な操作をサポートしている。また,チャック/アンチャック/製品の回転等の操作用スイッチを集中させ,

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