マツダ技報 2022 No.39
158/275

―149―5. ユニット機能保証における取り組みFig. 8 Lower Block Hanging FixtureFig. 9 Unit Function Assurance SystemFig. 10 Motoring Test System作業性向上も考慮した仕様とした。 エンジンハーネスもエンジンの長尺化により,部品の体積が増大した。従来は,Fig. 1で示すゾーンCの気密性テスト後に組み付け始め,コンベア上のエンジンの向きに応じて複数の工程で各コネクターに結合していた。この過程において他の部品の組み付け作業エリアを確保するため,ハーネスを束ねる,移動する等の付随作業を何度も行っている。開発構想段階においては,ハーネスのボリューム増加により移動させても他の部品組付けの作業空間が確保できなかった。このため,コンカレント活動を通じてハーネス構造の最適化を行い,従来よりも後工程の全方位組付け可能なAGV自在工程で組める構造とすることで不要な作業を排除することができた。4.2 部品サイズ大型化に対する部品供給の取り組み 直4エンジンのSKYACTIVD 2.2とSKYACTIVD 3.3を構成する部品を比較すると,各々のエンジン1台当たりの部品の種類数は6点増えたに過ぎないが,部品の体積合計は,直6では直4比で37.4%増,供給作業時間に換算では25%増となる。部品供給は,組立工程に直接部品供給する一般供給,エンジンと同期して組付部品群を流すキット供給,1部品を生産順に供給する順序付け供給の3つに大別される。これらに対して部品大型化により,➀順序付け供給部品が増え,部品庫スペースが不足する,➁キット容器に部品が収まらない,➂部品供給量の増大により,供給作業時間が増加するという3点の問題に対する課題解決を行った。 現在,直4エンジンラインは増産を重ね,国内では3本のラインで生産している。当初は各ライン個別に調達部品を受け入れていたが,3ライン共通使用部品も多いことから現在,調達部品の約7割は一括納入され,社内で各ラインへ巡回供給している。直6エンジンは直4エンジンとの共通使用部品は29%であるが,部品の製造輸送業者に大きな違いがなく,トラックの輸送効率向上のために「一括納入体制」に編入することとした。また,部品供給工程では組立ラインで収集している生産品質実績を活用し,生産計画と照合しながら必要なタイミングで必要な部品の供給量を指示するシステムを構築している。このしくみを直6エンジン組立ラインにも適用し,供給先へ必要最小限の部品のみを供給できるようにした。この一括納入の拡大による多回納入と部品供給指示システムの導入により,➀のスペース不足を荷受場とラインサイドで補完した。 ➁のキット容器へ収容化という課題に対しては,従来1セットだった容器を部品配置の自由度を高めるために,ゾーンCとゾーンDにキット容器を分けて,従来比2倍超体積の対象部品を供給できるようにした。更に2つに分けることにより,従来順序付け供給であったハーネスやEGRクーラーなどキット供給に取り込み,全体的な供給台車数を減らすことができている。 ➂の供給作業時間の極小化という課題に対しては,供給台車の収納数をそろえてライン全体としてサイクリックに複数の部品をまとめて供給するしくみ,上記の供給指示システムを適用して効率的に搬送を行うことで解決した。その結果,供給作業時間を8%増で抑えることができた。 ユニット機能保証の考え方は,エンジンの燃焼性能を機能特性に展開し,機能特性を全数計測し確認を行うことで,ばらつきなく燃焼性能を保証したエンジンユニットをお客様のクルマに搭載し,お届けする品質保証システムをライン全体で構築することである。そのため,Fig. 9に示すように組立ライン内の要所に検査工程を設け,組み立てた機能特性を定量的な指標で計測し,全数保証を実現した。 検査工程のシステムをFig. 10に示す。エンジン出力軸を,外部モーターで回転させ,電装部品を制御しながら模擬的に燃焼状態を再現させ,機能特性として,回転トルク/筒内圧力/吸排気流量/吸排気圧力/燃圧/油圧等の波形データを各センサーから取得し,特徴量を抽出することで良否判定を行っている。

元のページ  ../index.html#158

このブックを見る