6. おわりに―150―5.3 振動が小さい完全バランスの機能保証 直6エンジンのクランクシャフトの配置による構造的な強みである完全バランス機能の保証について紹介する。直4エンジンではクランクシャフト回転時に発生する二次振動は,直6エンジンでは完全バランスにより発生しない構造となっているため,静粛性が向上している。このユニット機能としての静粛性をNV(マイク,振動センサー)で保証することに加えて,振動の発生源であるピストンクランク機構の完全バランスを,機械抵抗トルクの波形で確認するプロセスはマツダ独自の取り組みである。 まず,量産中のSKYACTIVD 直4エンジンにて,機械抵抗トルクの単気筒モデル式を確立させた(Fig. 13)。Fig. 13 Model Formula of Mechanical Resistance このモデル式を使用して新開発の6気筒エンジンの諸元から理論波形を算出し,理論どおりになっていることを実エンジンで確認した。その上で,機械抵抗トルクの波形の振幅を指標として,この振幅が直4エンジンより60%小さくなっていることを定量化し,完全バランス機能を全数保証している(Fig. 14)。Fig. 14 Small Amplitude of 6-cylinder’s Torque Curve 以上,3つの事例を紹介したが,今後は,市場のデータを活用し,更なる品質向上/機能進化へつながる取り組みをしていく。Fig. 11 Increased Intake Air Flow with Turbocharger with Variable Turbine Geometry5.2 希薄燃焼のための高圧燃料システム保証 高効率でクリーンな希薄燃焼を追究するために,燃料噴射の圧力を高圧化した。組立直後のエンジンでは燃料経路は空気で満たされており,空気を燃料に置換する必要がある。検査装置で燃料置換を行うために,Fig. 12に示すように,実際にエンジンへ軽油を入れて燃料ポンプを制御しながら空気と置換し,その上でねらいどおりの最高燃料圧力250Mpaまで昇圧することを燃料圧力センサーで確認している。Fig. 12 Higher Fuel Pressure System このユニット機能保証の中で,性能向上のための新機能に対する機能保証技術の進化の取り組み事例を紹介する。5.1 トルクアップと希薄燃焼を両立する吸入空気量 トルクアップと高効率な希薄燃料を両立するために,排気量アップと併せて空気を大量に取り入れる可変ジオメトリ-ターボチャージャー(以下,VGターボチャージャー)過給システムを採用した。この過給システムの機能保証をするために,VGターボチャージャー過給システムに関わる全ての部品を組み立てた完成状態で,エンジンユニットの吸入空気量をモニタ-している。Fig. 11に示すように,VGターボチャージャーのベーンノズル間の隙間を絞ることでタービンの回転速度を上げ過給流量が上昇し,吸入空気量が大きくなっていることを確認している。保証 今後,カーボンニュートラル,CASE対応と市場が激変していく中でマツダは2030年グローバルにて電動化100%に向けて対応していく。内燃機関の規模は縮小していくが,マルチソリューション対応でいままで以上にさまざまなニーズに応じた多機種の内燃機関をタイムリーに提供していく必要がある。このために,今回新設したエンジン組立ラインの高効率フレキシブル性を継続
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