マツダ技報 2022 No.39
168/275

―159―2. 新世代ボディー及び新ライン概要2.1 新世代ボディー これまでのボディー構造において,基本骨格のストレート化,マルチロードパス構造,環状構造化に取り組み,軽量・高剛性なボディーを実現してきた。CX60では,更なる性能向上の実現のため,各フレーム接合部の強化や部品板厚の最適化等によって,➀身体拡張能力を引き出す剛性の連続性,➁快適な乗り心地と上質な静粛性,➂世界最高レベルの衝突安全性能という三つの価値をもつ軽量・高剛性ボディーを目指した。 これまでのボディー構造は,車体側面にあたるサイドフレーム,車体上部のルーフをそれぞれアウターパネルとレインフォースメントをサブアセンブリ後,ボディーフレーミング工程にてアンダーボディーと接合する。そのため,アウターパネルによって隠れるフレーム同士の接合ができなかった。そこでCX60は,アンダーボディーに対してサイドフレーム,ルーフのレインフォースメントをボディーフレーミング工程で先に接合し,その骨格にアウターパネルを位置決め・接合するインナーフレーム構造へ変更した(Fig. 1)。アウターパネルセット前に溶接工程を追加することで,環状構造部に対してスポット溶接の自由度を高めることができる(Fig. 2)。そしてCAE解析によって導いた接合効率のより良いポイントに対して,重点的に接合点を追加でき,その結果としてプレス部品の板厚最適化による軽量化,車体強度・剛性アップを実現した。2.2 新ボディーフレーミングライン ボディー性能と生産効率の向上を両立させるため,開発部門との共創を行った。これまでのボディー構造の車とCX60を同一生産ラインで混流生産を実現するため,ボディーフレーミングラインに対して新コンセプトのアウターパネルの投入と位置決め・接合工程(アウタースキン工程モジュール)の追加のみでグローバル拠点でも生産可能とした。 ここからは,CX60の生産を高品質かつ短期間で実現するため,三つの取り組みについて各章にて紹介する。 (1)3章では,フレキシビリティ進化と商品価値を高めるため,机上段階での加工効率(加工速度・加工可能時間)最大化の取り組みについて紹介する。 (2)4章では,柔らかいアウターパネルをねらいの位置で接合し,滑らかにつながる面の連続性を実現させるボディー寸法精度保証の取り組みについて紹介する。 (3)5章では,インナーフレーム構造における理想断面実現のため,新しい片側接合工法であるClosed Section Spot Welding(以下CSSW)を開発・適用について紹介する。3.フレキシビリティ進化と生産効率向上の 取り組み3.1 フレキシビリティの進化 マツダは,多品種少量生産を実現する考え方の下,複数車種を同一ラインで混流し,少量でも効率の高い操業レベルを維持できる生産システムを構築してきた。その上で,更なるフレキシビリティ向上のためFMLを構築し,商品機能の進化,生産台数の変動により柔軟に対応できるようにしている。具体的には,生産設備を➀治具モジュール,➁セルモジュール,➂工程モジュールの三つのモジュール概念で構成,モジュールの組み合わせや追加により構造進化への柔軟な対応を実現した。 ➀治具モジュールでは,車種専用の治具を切り替える仕組みを取ることで,製品形状の変動の吸収を可能にしている。➁セルモジュールでは,スモールサブラインをセル化し増減することにより,加工量や部品点数の変動の吸収を可能にしている。また,ボディー構造の大幅な変更に対しても➂工程モジュールを既設のラインに追加することで対応可能としている(Fig. 3)。Fig. 1 New Module for Outer Skin ProcessFig. 2 Reference Section of Spot WeldingFig. 3 Module Concept

元のページ  ../index.html#168

このブックを見る