マツダ技報 2022 No.39
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 CX60の導入にあたっては,接合強度向上のため,各フレーム部を接合する工程と,インナーフレーム構造へアウターパネルを組み付ける工程機能を追加する必要がある。 各フレーム部を接合する工程については,既存工程を最大活用するため,新構造に対応しつつこれまでの治具モジュールと入れ替え可能とする構造に進化させた。特に構造実現については,製品設計初期段階から開発部門と共創,各フレーム同士の接合位置や形状を工夫し,これまでの工程仕様が活用できる構造を製品形状に織り込んだ。 インナーフレーム構造にアウターパネルを位置決めする工程機能については,既存工程に工程モジュールとして追加できるようにするため,工程の小型化,汎用化を進めた。治具モジュールについては,4章で紹介する工程検証を実施し,必要最小限な加工基準ユニットに絞り込むことで小型・軽量化を実現した。更に,これまでのボディーフレーミング工程のような大型汎用装置での治具モジュール入れ替えではなく,汎用ロボット・NC装置を活用した治具入れ替えと,治具モジュールの位置決めを実現した。 これらの対策により,環状構造の閉断面化を実現し高剛性化に寄与するとともに,これまでのボディー構造の車とCX60が混流生産できる生産ラインを実現した(Fig. 5)。―160―Body Framing Reinf. Process Outer Skin Process 3.2 加工効率の追求 新たな構造や加工量の増加に対し,加工工程の追加が必要になるが展開スペースには制約がある。そこで,加工効率を向上させ,既存ラインと同等の展開スペースにするため,(1)加工速度の向上と,(2)加工時間の最大化の視点で取り組んだ。(1)加工速度の向上 溶接作業ロボット動作速度向上のため,通信速度に着目,これまで上位通信のPLC(Programmable Logic Controller)経由だった溶接指令をロボットコントローラーからの直接指令に見直した。加えて,ロボットの動作を構成するサーボモーターの軸移動量最小を理想状態と定義,ロボットプログラムの教示要領を改定した。これらの取り組みにより,加工速度は33%向上した。(2)加工時間の最大化 以下三つの施策に取り組みし,加工可能時間を最大化した。 ➀ロボットインターロック待ち最小化:溶接工程においては複数のロボットが同時に加工作業を行うが,加工量そのものに差があれば待ち時間が発生する。また,動作範囲が干渉する領域においては相互インターロック回路を設定し,一方のロボットが干渉域での作業を完了するまで他方のロボットは干渉域外で作業完了を待たなければならない。これらの待ち時間を極小化するため,溶接機形状の標準化・小型化を進め,加工可能部位の選択肢を拡大した。 ➁密集配置化:加工密度を向上させるため,ロボット動作シミュレーションを活用しロボット動作範囲の干渉最小となるロボット配置を検討し,加工量の平準化と複数部位が同時加工できる密集配置レイアウトを実現した(Fig. 6)。Fig. 4 Mazda Flexible Production Line ConceptFig. 5 Process Module ComparisonFig. 6 Robot Concentrated Layout 更に,このモジュール構想を有したライン構成をグローバルに展開することによって,拠点間での生産車種移管が短期間で可能となり,台数比率変動に対する生産車種編成の変更を容易にした(Fig. 4)。 また,搬送時間を短縮し,タクトタイム内の加工可能時間を拡大した。これまでの搬送措置は,スライド装置と昇降装置を一体化させた構造にてボディーを次工程へ搬送してきた。この昇降機能を位置決め機能装置側へ移管,搬送時間から昇降にかかっていた時間を削減した。加えて,昇降ユニット削減による軽量化により,搬送設

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