―8―2.1 魂動デザイン 2010年に始まったマツダのデザイン・テーマ『魂動』は,クルマの形に美しく生命感を表しブランド価値を向上させてきた。そして2015年のビジョンモデル,RX VISION以降は『Car as Art』をスローガンに魂動デザインをアートのレベルに高めるべく深化させている。そこには日本の美意識を礎とするエレガンス表現の「引き算の美学」,すなわち余分な要素を徹底的に排除することで本当に魅せたいものだけを研ぎ澄ませて魅せることを謳っている。CX60のデザインでは,ラージプラットフォームのもつ走りのポテンシャルを骨格に表し,その上に,余分な要素を徹底的に廃し,後輪に強く荷重をかける力強い一筆のはらいのようなデザイン・テーマを研ぎ澄ませて魅せることに注力した(Fig. 1)。Fig. 1 Exterior Overall2.2 デザイン・コンセプト 『Noble Toughness』 『Noble Toughness』 これは,ミドルクラスSUVのもつべき車格の高さや強さと,魂動デザインの知性,エレガンスを両立させるというねらいを表したもの。ここには,意のままの走りに昂ることと,地球環境を守る責任という,一見相反するものを知的に両立させる,という思いも込めている。3.1 縦置きパワートレイン後輪駆動ベースの走りの ラージ商品群は,走りと環境対応を理想的に両立するため,縦置きパワートレインと後輪駆動ベースのプラットフォームを採用している。これによって生まれるロングノーズ,ショートデッキのバランスは,魂動デザインの真髄ともいえる走る生命体の動きの美しさ,すなわち後足で地面を蹴り,前方へ加速する動きを表すバランスと符合する。CX60のデザインでは後輪に荷重をかける2. デザイン・コンセプト3. エクステリアデザインFig. 2 Exterior Main Movement of Theme3.2 デザイン・テーマ CX60のデザイン・テーマは,前述の骨格的なテーマを唯一のものとし,「引き算の美学」で,余分な要素を徹底的に廃しながら,奇をてらわず「美しさの正統」を追求した。そのためにシルエット,陰影,映り込む光の移ろいなど全ての細かな変化も全体の動きに緻密に連動させて,前後を貫く背骨の前方への加速感と,キャビン後端に溜めた力をリアアクスルにかすめて地面まで突き抜く大胆な動きの強さを完結させている。 CX60は乗用車系に比べ,ホイールベースが長く全高も高いためボディーサイド面は広大である。また,全幅はCX5より50mm拡大したがそれはインテリアに不可欠であり,エクステリアデザインのための更なる拡幅は避けた。限られた寸法の中での魂動表現への挑戦は難易度を著しく高めたが,結果として仕上がった形には緊張もむしろ車格を表すワイド感や整然としたエレメントの配置を優先した。 これらにより上質な走りを生むラージプラットフォームの素性の良さをより純度を高めて車格として表し,お客様には,マツダらしさの中にもトレンドに左右されないひとクラス上の豊かさを体感いただけるレベルに仕上げられた。骨格動きを表すことで魂動デザインの生命感を表すのと同時に,エンジニアリング上の特徴もしっかりとデザインの骨格としてとらえ,形状のもつ意味をより深いものとした。 CX60のデザインは,どのアングルから見ても堂々とした骨格的な魅力を感じられるように,バランスを緻密にコントロールしながら,以下の特徴を持たせた。(1)水平基調 強力なパワートレインが載るノーズにはしっかりとした厚みを持たせて車格を高め,前後を貫く背骨はウェッジを和らげた水平基調のものとした。ただしそれは単調なものにはせず断面の変化による光の動きで,前方へ突き抜ける加速感を表現している。(2)後輪荷重 ロングノーズに加えて,ぐっと後方に引いたキャビンの後端に溜めた力は後方に向けてなだらかに下げたルーフラインによってしっかりと後輪に荷重をかけるバランスにした。前方に跳躍しようとする生命体の構えのように次の動きを想起させる。(3)溜めた力を後輪に伝える強力なワンモーション キャビン後端に溜めた力を,リアアクスルをかすめながら一気に地面まで突き抜く強力な動きを骨格全体の動きとして表現。前後を貫く背骨の加速感と,キャビン後端から地面に突き抜く動きで,シンプルで大胆な骨格的なテーマとした(Fig. 2)。
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