マツダ技報 2022 No.39
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 3Dモデルの再現精度向上については3Dスキャン技術を活用し,これまで机上再現が難しかった工場内の配線・配管やロボット付帯のケーブル類を評価環境に再現した。これにより干渉確認精度を向上させ,ロボット回避動作の最小化やタクトタイムの能力・精度向上を実現した。 これと並行し,設備を制御するPLC動作環境についても机上に再現した。これまでは現場確認しかできなかったラインコントロール全体での動作成立性・タクトタイム検証が可能になった。本システムの活用により,製品設計と並行した工程設計が可能となった。今後は展開ラインを拡大させ,量産早期化によるお客様へのタイムリーな商品のお届けに貢献していく。―161―4. ボディー寸法精度保証の取り組み Previous CX-60 Fig. 9 Locating Method of Body Side Outer Panel 以降に事例を踏まえ,ボディー寸法精度をねらいどおりに作るための良品条件の決め方と工夫を記述する。4.1 加工基準の位置と数の決め方 サイドフレームアウターパネルは車両側面の外板部品であり,ドアやリフトゲートなどと合わせ連続したデザインを構成しているため,その寸法精度が非常に重要となる。そのためには,ドアやリフトゲートを取り付けるヒンジ面は±0.1mm,ドア開口,リフトゲート開口との境目であるパーティングラインの面精度は±0.2mmが目標となることを,蓄積した知見より導出した。この目標を達成する加工基準の位置と数をCAE活用により決定した。CAE検証の結果,位置決めした時点でリアドア開口のパーティングラインの面精度が重力の影響を受け,面の位置が車の下方向に0.3mm,前後方向に0.3mm精度変化(青色)した(Fig. 10左図)。サイドフレームアウターの精度目標を達成させるために,寸法精度変化を抑制できる最も効果のある位置をCAEで再検証し,加工基準を設定した。その結果,Fig. 10右図のカラーマップのように,実車状態(組み付け姿勢)においても,寸法精度に変化がなく(緑色),リアドア開口のパーティングラインの面位置を±0.1mm以内で実現させることができた。 他の部位・部品・工程に関しても,同様のプロセスを踏むことで,精度目標を達成できる加工基準の位置と数を設定した。Fig. 7 Double Core E■ciencies Result3.3 机上評価精度の向上 CX60の新車開発と並行し,工程のフレキシビリティと加工効率を突き詰めるためには,シミュレーションで検証をやりきり,これを実機で100%再現できる検証プロセスが不可欠である。実現に向け,デジタルツイン環境を構築し,工程設計の精度向上を図った(Fig. 8)。Fig. 8 Digital Twin Concept備の高速化を実現した。これらの三つの対策により,工程内の加工可能時間を16%改善した。 加工速度の向上と加工可能時間最大化の取り組みにより,生産ラインの単位面積当たり加工量は17%向上し,従来ライン同等のスペースへ設備展開を可能にした(Fig. 7)。 魂動デザインを忠実に再現できるボディー寸法精度保証のため,ボディーの骨格であるインナーフレームに組み付けるアウターパネルの位置決め・拘束のための基準(以下,加工基準),治具解放後寸法精度保持に必要な溶接打点位置と順序の適正化に取り組んだ。ボディー側面にあるサイドフレームアウターパネルは板厚0.7mmの鉄板で作られた12Kgを超える大型薄板部品である。また,ドア開口があり,部品自体の剛性が低いため,自重の影響により容易に変形する。この部品を3次元空間内で寸法精度保証するためには,重量・剛性を考慮した加工基準の設定が重要となる。これまでの車では,水平状態で治具にサイドフレームアウターパネルをセットし形状を整え,そこに剛性の高いレインフォースメントを投入・接合することで高い寸法精度(±0.1mm)を実現してきた(Fig. 9左図)。一方,インナーフレーム構造のCX60は,サイドフレームアウターパネルを実車状態で保持し,インナーフレームに組み付ける構造であり,従来同等の寸法精度を保証するためには,加工基準と溶接打点位置と順序などの良品条件を新たに設定する必要があった(Fig. 9右図)。

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