マツダ技報 2022 No.39
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(1) 有泉雄一ほか:車体フレキシブル生産の進化,マツ―163―6. おわりにIndirectSpot WeldingPower Supply SideElectrode AElectrode BGrounding SidePressureForceWeldingCurrentSpotweldCSSWPower Supply SideElectrode BGrounding SideElectrode AElectrode CFig. 16 Signal-to-Noise Ratio, S/N Ratio for CSSW5.3 CSSW工法の接合要件化 更なるCSSW溶接品質のロバスト性確保のために,接合要件化と構造への織り込みを開発部門とコンカレントに進めた。CSSWは給電部からアース部の電極間に電流を分流させずに効率よく接合点を発熱させられるかがポイントとなる。そのため,CSSWの給電部とアース部のピッチを定義し,サイドシルフランジ内におけるスポット溶接位置とCSSWアース位置のピッチを定め,接合要件に反映した。 これらの取り組みの結果,電極と接合部品との接触面積,電流密度が安定し,従来のスポット溶接と同等レベルでの加工速度を実現できる工法を実現した。CSSWの採用は車の軽量化,高強度・高剛性化などの性能アップに貢献できる工法であり,CX60ではサイドシル部の適用としたが,良品条件の一般化を行い,更なる適応箇所の拡大に取り組んでいく。Fig. 14 Ideal Sill-Side SectionFig. 15 Comparison of Indirect-Welding & CSSW5.2 CSSW工法について インダイレクト溶接は,電極の両極を同一平面に配置した閉断面の抵抗溶接である(Fig. 15左図)。これら抵抗溶接の品質は,3大条件である➀溶接電流,➁通電時間,➂加圧力で決まる。インダイレクト溶接は,通常のスポット溶接とは異なり,加圧力が部品剛性に依存するため,加圧力をいかにコントロールするかが課題となる。アース側での部品の弾性変形により溶通電経路が安定せず,溶接品質安定化のため溶接条件のチューニングが必要となる。結果,溶接品質が不安定となり,溶接部の防錆性能低下のみならず,溶接時間延長による加工効率の低下と無駄な電力消費につながる。 CSSW溶接では,インダイレクト溶接の課題である加圧力の安定化のため,部品変形・溶接面のばらつきを抑制し,通電経路と電流密度の安定化を図った。コンセプトとして,アウターパネルをフレームと接合する給電側は低加圧力,サイドシルフランジのアース側は高加圧力のクランプ構造で安定した溶接品質が確保できるよう開発を進めた。品質工学手法を用いた基礎実験により,各参考文献メント同士の強固な接合ができる。一方で,アウターパネルとレインフォースメント間の接合は閉断面となり,スポット溶接機での接合ができなくなる。通常の接合面を両側から挟み込むスポット溶接で加工するためには,アウターパネルを接合可能なフランジ位置まで延長させる必要があり,ねらいのサイドシル断面積がとれないこと,また質量増加につながる課題があった(Fig. 14)。 これを新たな片側接合工法であるClosed Section Spot Weldingを開発することで解決した(Fig. 15右図)。電極の先端形状・先端径や管理項目を決め,良品条件を明らかにした(Fig. 16)。スポット溶接同様,シンプルな管理で溶接性としてのロバスト性が確保できた。この導いた良品条件を基に,社外協力メーカーとともに,CSSW溶接機を共同開発した。 今回の取り組みにより,これまでのボディー構造とCX60のBOP構造のボディーを同一ラインで高効率フレキシブルに生産する車体組立ラインを量産に結び付けることができた。多大な協力を得てH2 FMLラインを立ち上げることができ,今回ライン展開にご協力いただいた工場・開発・生産技術及び社外協力メーカー各位の方々に深く感謝の意を表します。ダ技報,No.37,pp.63-68(2020)

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