マツダ技報 2022 No.39
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 c. 縦基調のヘッドランプ フェイスのおおらかな強さをもつ表情は,その機能構成も縦に重ねて凝縮した縦基調のヘッドランプによって―9―Fig. 3 Tense of Exterior Expression3.3 エレメントデザイン 骨格全体で表現するデザイン・テーマの造形には大きく,おおらかな性質を持たせたが,各エレメントのデザインは,その大きな動きをしっかりと受け止め,引き締めるものとした。(1)フロントフェイス a. 表情 強力なパワートレインを擁するフロントフェイスにはしっかりと厚みを持たせ,水平基調の骨格の一端とした。その表情は,これまでのマツダ車の低く,薄く,切れ長の目を持ったシャープな強さとは違う,各要素に縦方向の厚みを持たせた大らかな強さをもつものとした。強い意志を表しながら,十分なパワーを擁するゆとりと自信から,他を威嚇はしないという強さを表現している。 b. シグネチャーウィングとライティングシグネチャー グリル,シグネチャーウィングやヘッドランプも彫刻的な立体感を強め,縦方向に厚みを増した強いバランスとした。シグネチャーウィング両端部のヘッドライトをかすめて後方に突き刺さっていく部分には,水平基調の細く鋭いライティング機能を組み込んだ。ポジションランプ,ターンランプ,そして,デイタイム・ランニング・ライトの一部としての機能を持ちながら,ヘッドランプのL字型の発光部と連携して,ライティングシグネチャーとしての強い存在感と新しい表情を創り上げた(Fig. 4)。Fig. 4 Front Lighting SignatureFig. 5 Side Signature感が生まれ,「表現しすぎない知性」ともいえる知的な魅力を備えることもできた(Fig. 3)。完結させた。穏やかに,しかし,まっすぐに前を見据える瞳の深さに,強い意志と自信を表した。(2)ボディーサイド a. ホイールアーチ上の三日月型のシャドー面 クルマのデザインは,ボディーに表現したダイナミックな動きを最終的にタイヤへと繋ぐことで,そのクルマの地面への踏ん張り感,スタンスを表現する。そしてそのタイヤへの形や光の繋げ方をどう処理するかで,スタンスの強さや前後のバランスの違いを表し,それぞれのクルマの特徴としている。SUVでは一般的にボディーに対してホイールアーチを外に出し,その寸法差によってタイヤに力を伝える筋肉質な造形を施す。 CX60は競合車と比べ,全幅に対する室内幅が突出して広い。これは商品としての大きな優位点であり,またラージ商品群全体での共通化戦略からも重要だ。一方,そのためCX60の外観の造形代,前述したホイールアーチとボディー面の幅方向の寸法差はこのクラスとしては小さく,通常の手法ではSUVとしての筋肉質な強いスタンスが表現しにくい。 試行錯誤の末,ボディー全体で表現するテーマ造形を全幅いっぱいまで広げて強め,それを一度三日月型にえぐってから,再度タイヤに繋げるという手法を導き出した。 これによって,ボディー全体で表現している大きな光の動きの強さを失うことなくタイヤに向けて繋ぐことができた。また,三日月型のえぐり形状のクォリティーを研ぎ澄ませることで,それらがおおらかなテーマ造形を引き締めるものとなり,CX60全体のデザインの中で無くてはならないものになっている。 b. フロントフェンダーのサイドシグネチャー 「引き算の美学」を謳う魂動デザインだが,CX60では一つだけ通常表現しないものを追加している。フロントフェンダーのホイールアーチの後ろ側に埋め込んだサイドシグネチャーだ。 ロングノーズ,ショートデッキの骨格のバランスの根源ともなるこのスペースはまさに強力な縦置きのパワートレインが収まる部分である。CX60では,意のままの走りと環境を守ることを両立した誇れるパワートレインを,威風堂々とした骨格のこの部分に収めていることを象徴し,またオーナーにも誇りに感じてもらえるよう,このサイドシグネチャーの設定を決めた(Fig. 5)。 黒色樹脂,漆黒クローム,クロームと素材を変え,上

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