マツダ技報 2022 No.39
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 CX60では,「面の連続感」に加えて「精緻感」の取り組みを行い,魂動デザインの塊感の更なる向上をねらった。そのためには,バンパー等外装部品の組み付け精度向上とともに外装部品の位置決め基準となるボディー部品の位置精度を向上する必要があった。 従来のボディー構造は,バンパーレインを基準として部品を介して外装部品の位置決め機能を設定していたが (Fig. 4),位置決め基準を一点集中させる構造にし,その基準部品の位置精度を高めるアプローチに変更した (Fig. 5)。CX60では,シュラウドUPメンバーに位置決め機能を集中させ,フロントボディー左右を連結するキーパーツとして,FOE化に対応しつつボディー精度の向上を図った。また,シュラウドUPメンバーを高い精度で位置決めするため,シンプルなストレート断面にし,ボディーへの接合時にばらつきを抑制できるようにした (Fig. 6)。―171―3. 魂動デザインの造り込みBumper ReinforcementPreviousGaps Between Parts Are Uniform and NarrowConventional Product Ultimate ProductFront Open EndCX-60Bumper Reinforcement Shroud up MemberFig. 1 Working Posture for Assembling Engine Room Fig. 2 Continuity in SurfacesFig. 3 ExquisitenessPartsFig. 6 Structure of Shroud up MemberFig. 4 Previous Concept of AssemblyFig. 5 New Concept of AssemblyPrevious者の立ち入りが可能になるFOEの採用を決定し,マツダでは初めてCX60の量産から実施した。 マツダの生産技術部門では,お客様への提供価値をものづくりの技術で更に向上させる取り組みを行っている。その一つとして,魂動デザインのねらいである生物のもつ生命感や躍動感の表現,金属から削りだしたかのような塊感を量産車で実現し,これをお客様への提供価値としたクルマづくりを行っている。 魂動デザインの塊感は,バンパーとボンネットなど,隣り合う部品の意匠面に映り込む風景が滑らかに連続し,一枚の面であるかのように感じられる「面の連続感」 (Fig. 2) と,部品間に存在する分割線に視線が留まった際に,作り方が想像できないほど細部の精緻さを感じさせる「精緻感」 (Fig. 3) で表現できると考えている。 従来車種では「面の連続感」を向上させるため,光の反射方向を左右する“法線ベクトル”を管理指標として,造り込みを行ってきた(1)。

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