FOE化に向け,バンパーレインは車体組立工程から車両組立工程での組み付けに変更し,シュラウドUPメンバーは,車両組立工程のエンジンルーム内作業の前に一度外し,作業完了後に再組み付けする工法にした(Fig. 7)。 ただし,シュラウドUPメンバーを一度外す際に応力が解放されることでフロントフレーム間のピッチが変化する懸念があり,車両組立工程ではシュラウドUPメンバー取り外しから再組み付けの前後でいかにピッチ変化を抑えるか,そして車体組立工程ではFOE状態でピッチ変化を抑制する構造,工法の開発が課題となった。―172―Fig. 7 CX60 Front Open End5. 課題解決の取り組み5.1 構造面での取り組み 車両組立工程でシュラウドUPメンバーを再組み付けする際,取り外す前の寸法を再現するため,シュラウドUPメンバーの左右端に位置決めピンを設定した。位置決めピン先端には斜めのガイド形状を設定してシュラウドUPメンバーを組み付ける下方向の荷重を横方向の荷重に変換し,変化したピッチを元に戻す構造とした(Fig. 8)。Fig. 8 Locating Pins of Shroud up Member4. FOEにおける課題 Dimension Between Front Frames.Shroud up MemberBody Assembly Assemble PartsTrim & Final Assembly ReassembleLocating PinsRemove Shroud up MemberTrim & Final Assembly Bumper Reinforcement Round ChamferingGuide ShapeLocating Hole 5.2 フロントフレーム間ピッチの寸法精度保証の取 量産の組み付け作業において,シュラウドUPメンバーを再組み付けするためには,左右端の位置決めピン挿入力を50N以下に抑制する必要がある。机上シミュレーションにより,目標とした位置決めピン挿入力を達成するためには,シュラウドUPメンバー取り外し前後のフロントフレーム間ピッチ変化を0.9mm以下に抑制する必要があることを導き,ボディーの寸法精度目標として設定した。 ボディーを製作する車体組立工程では,300点以上の部品を基準ピンや基準面といった位置決め治具で拘束し,4000点以上の溶接打点でつなぎ,ボディーを組み立てる。部品間の接合面に干渉や隙間があると,溶接による接合時に内部応力が発生し,位置決め治具の拘束を解いた際に応力解放により元位置を保てず,寸法精度の変化を生じる。フロントフレーム間のピッチ変化を抑制するためには,部品間の干渉や隙間による寸法精度変化を最小化できる溶接打点順番,位置決め治具の基準ピンや基準面 (以下,加工基準)位置などの良品条件の検討が必要となった。 フロントフレーム間のピッチが決まるフロントボディー工程において,溶接打点aとbはPart-AとPart-Bの相対位置関係を決める溶接打点であるため,接合面の隙間を想定し,溶接打点順番の検討を行った (Fig. 10,11)。Fig. 12がその一例として溶接打点順番の差異によFig. 9 Strength of Shroud up Memberり組み この構造では,ボディーが変化しようとする荷重を受けても,位置決めピンやシュラウドUPメンバーが変形しないような強度に設計する必要がある。そこで,左右の位置決めピン同士をストレート断面でつなぎ,1部品で必要な強度を確保できるようにした上で,CAE解析にて確認を行った (Fig. 9)。ストレート断面でつなぐ考え方は,車体剛性を高めることにも貢献している。 加えて,シュラウドUPメンバー再組み付け時の挿入力を考慮し,位置決めピンのガイド形状やRの大きさを試作品にて検証し,最適な形状を織り込んだ。これらを実機で検証し,シュラウドUPメンバーの再組み付けにより,取り外す前の寸法を再現できることを確認した。
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