マツダ技報 2022 No.39
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(1)a→b CX60では,FOE化によるボディー構造の進化を活用し,クルマの顔ともいえるフロントエンドのボンネットとバンパー合わせ部の隙を従来よりも狭くし,精緻な外観品質を目標とした。 従来のボンネットとバンパーの合わせ部では,部品の固定基準から外観の合わせ部までの寸法公差を積み上げると部品公差の集合体となるため,部品合わせ部の隙については製造上,大きくせざるを得なかった。そこで,バンパーの位置決め機能を集約させた部品を使い,車両組立工程でばらつきをキャンセルする工法を開発することで,従来よりも隙を15%縮小し,外観品質向上を図った。 具体的な手法は,バンパー位置決め機能を集約した鉄板部品 (以下,バンパーブラケット)をボンネット先端基準で位置決めする治具を新規開発し,ボンネットとバンパーの隙をコントロール可能とした (Fig. 14)。治具の構想は,Fig. 15に示すバンパーの上下方向の基準となるバンパーブラケット_Aを治具_1で取り付け後,Fig. 16に示すバンパーの前後方向の基準となるバンパーブラケット_Bを治具_2により,ボンネット先端基準で位置決めすることとした。―173―6. 外観品質向上の取り組みBumper Bracket_AWithout locator With locator Part-A Part-B locator (2)b→aJig Bumper Bracket_B Fig. 10 Parts Condition and Spot-Welding PointFig. 11 Example of the Underbody Process2 Fig. 12 Verification Result of Welding SequenceFig. 13 Verification Result of Locating ConceptFig. 14 Structure Around Bumper1 2 1 る結果をCAE解析で比較し接合前後の寸法精度変化をカラーマップに表したものである。溶接打点後のフレーム後端(赤枠1)の寸法精度変化量に0.5mmの差があり,それによって,フレーム先端のシュラウドUPメンバー接合部(赤枠2)で0.3mm寸法精度変化することが分かった (Fig. 12(2))。そのためにフロントフレーム間ピッチ変化に影響の少ない溶接打点順番(1)a→bを採用した。 また,加工基準について,フロントフレームの重心位置の影響で,従来設定した加工基準では部品が外側へ傾き,フロントフレーム間ピッチを変化させることがCAE解析から分かった (Fig. 13左図の赤枠)。そこで,フレームの傾き補正を考慮した加工基準を設定することにより,接合前後で寸法精度の変化が0.1mm以下となることが確認できた。その結果に基づき,決めた加工基準を工程設計に織り込んだ (Fig. 13)。 このように,FOE化に向けたボディー精度保証の課題について,机上段階で対策・検証を実施した良品条件を設定し,実機確認によりその確からしさを確認することができた。その結果フレーム先端左右ピッチの変化を抑制し,シュラウドUPメンバー再組み付け時の位置決めピン挿入力の目標を達成できた。 以上,構造面の取り組み及び,ボディー寸法精度の造り込みにより,FOEの精度保証が可能となった。FOEの実現により,以下3点の効果を得られた。➀腰曲げ作業廃止による作業性向上➁作業性向上により可能となった部品一体化によるコスト低減➂作業効率向上

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