マツダ技報 2022 No.39
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―180―NormalFig. 13 Gaze Distribution of Normal and Anomaly この傾向を使い,車両の前方をセンシングするカメラの情報からサリエンシーマップを生成し,ドライバーモニタリングカメラから得られたドライバーの視線を重ね合わせ,脳の異常発生時に受動的に注意が引かれる箇所へ視線が偏る変化をとらえ,ドライバーの異変をいち早く検知する。 運転中の速度増加に伴い有効視野が低下することや,ドライバーはリスク対象を見つけた場合その対象へ注意を残しつつ他の対象にも注意を向けて周辺状況を把握する。これらのことも考慮してモデルを構築した。 なお,交通環境のリスクの高さは自動走行の経路生成でも用いられるリスクポテンシャル(Risk potential method)で定量化している。4.2 ヒューマン・マシン・インターフェース ドライバーが運転を継続できなくなった場合,同乗者がパニックや不安になることが想定される。不安をできる限り解消し,システムの制御に安心して任せられることをねらいに,制御介入後のメーター,ディスプレーの表示や音声案内を作り込んだ(Fig. 14)。Fig. 14 HMIs for Communicating with Passengers 同乗者が安心感を抱くには,2つの機能が必要だと考えた。 一つは,システムの作動状況が分かることである。具Anomaly a) Inform Passengers that the Driver’s Abnormality was b) Inform Passengers that the Vehicle will Stop4.3 ドライバー異常時退避技術 MAZDA COPILOT CONCEPT技術試作車は,高速道路/自動車専用道路では,車線変更して路肩や非常駐車帯などに移動する。一般道路では車線変更し,路肩等の安全な場所を探索し退避する技術を搭載している。特に一般道路では,路上駐車の車両を避ける,赤信号の交差DetectedFig. 15 Reassuring Interactions ドライビングシミュレーターを用いて,健常者と脳疾患の患者から運転中の視線挙動のデータを取得した結果,健常者はサリエンシーの高いところだけでなく,周囲に視線を配っていた。一方で,脳疾患の患者は,運転に全く関係ない,ただサリエンシーの高いところに視線が偏る傾向がわかってきた(Fig. 13)。体的には,バックアップとして待機していたシステムが,ドライバーの異常を検知して起動する際に,「ドライバーの異常を検知しました」という表示と音声案内で示し,それと同時にクルマに神経が宿り表出する様子をデザインし,制御が発動したことをアニメーションで示している。システム作動中は常にオレンジ色の輪環が回りながらクルマの周りを囲んでおり,クルマと乗員を守り続けている様子を伝えている。また,「赤信号を検知して停車する」などの状況判断をシステムから伝えている。 二つめは,同乗者が先を予測できることである。数秒先に何が起こるか,システムがどう動こうとしているかを表示と音声案内であらかじめ伝えている。具体的には,「車線変更します」「安全な場所へ移動します」「停車します」などをあらかじめ伝えた上で,同乗者の予測に符合した制御を実行している。 これらにより,同乗者にとって安心感の高いインタラクションを実現している(Fig. 15)。

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