マツダ技報 2022 No.39
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―186―4. OFFROADモード4.3 オフロード路面用のTCS(トラクションコント オフロード路面に最低化した4輪のブレーキとエンジントルクの協調制御によってトラクションを最大化し,NORMALモードよりも高い走破性とスタック脱出性能を実現した。タイヤの空転時に的確に接地輪に駆動力を伝達し,さまざまなオフロード路面(土質,勾配,凹凸)に対応しながらも,ドライバーによるアクセルコントロール性も損なわないような特性とした。4.4 アイドリング/クリープ制御による登坂発進性 急斜面の登坂発進シーンでは,路面の勾配を検知して自動的にエンジンのアイドリング回転数を上げてクリープトルクを増強することで,ずり下がりを抑制して力強い発進を実現した。加えて,坂に対してクルマが斜めにアプローチする「キャンバー走行」のシーンでは,ハンドルの操舵角と車体の傾きから進行方向が登りか下りかを判断する。登りの場合にはアイドリング回転数を上げ,下りの場合はアイドリング回転数を下げることで,路面勾配状態に応じた発進性向上を図った(Fig. 9)。Fig. 9 Slope Detection in Idle Speed-Up Function4.5 AT制御による滑らかで連続的なトルク伝達 ATのシフトアップポイントを高回転化することで,連続低速走行における余裕駆動力を増やすとともに,トルクコンバーターのロックアップクラッチの制御をより滑らかで連続的なトルク伝達特性とすることで,安定したトラクションを確保して高い登坂性能を実現した(Fig. 10)。Fig. 10 Improved Hill Climbing Performance in Real Fig. 8 Reduction of Corrected Steering Operation in High-Speed GravelO■-Road Environmentロール)能向上 これら運動性能の違いに連動した静的・動的デザインを通じ,計器としての車両状態情報の伝達性能向上に加え,視覚的なアイデンティフィケーションを突き詰め,人の感情への作用という付加価値を追求することで,独自の運動性能技術であるMi-Driveという商品性向上を両立した。 スタック脱出時の一時的な機能であった従来のオフロード・トラクション・アシストから,今回,AWD,エンジン,トランスミッション,ブレーキをより総合的な協調制御とすることで,低速から高速まで幅広いシーンでの走行性能を高めるOFFROADモードへの進化を実現した。4.1 AWDによる高い走破性とトラクション性能の向上 OFFROADモードでは,全車速域でAWDの後輪へのトルク配分を高めてトラクション性能を向上させる。実際にスリップ発生する前からAWDの締結力を高く保持するなど,低速ではより高い悪路走破性やスタック脱出性能を実現した。高速走行においても安定性を重視したハンドリング特性とした。4.2 GVCによる接地感の向上 マツダ独自のドライバー操舵に連系したエンジントルク制御であるGVCでは,接地荷重が不安定で滑りやすいオフロード路面に対する安定性を向上させるため,NORMALモードに対してターンイン時のエンジントルクダウン制御のゲインを強めて応答性を高めつつ,制御終了のタイミングを早めることで定常旋回時のリヤスタビリティを高めた。これにより,直進安定性とリニアリティの高い旋回挙動を両立した(Fig. 8)。

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