マツダ技報 2022 No.39
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平賀 直樹 梅津 大輔―193―5. おわりに緒方 博幸  これらの結果を受け,一般ドライバーを含めた多数の国内外ドライバーを対象に,KPC有無比較による官能評価を行い,得られたコメントを以下に記す。Fig. 1で示した車両運動コンセプトのねらいどおり,旋回中のヒーブを抑制することでドライバーの操作に余裕が生まれ,自信をもった操作が行えるようになったことが確認できる。KPC評価コメント)・コーナーターンインから脱出にかけて,浮き方向のロールが抑えられ,接地感の改善効果を感じる。・アンジュレーションのあるコーナーで内輪側の接地感が向上している。・S字コーナー切り返しでの操舵のつながりが良い。・コーナー脱出にかけてリアが安定しているので,アクセルを踏んでいける。 コーナー旋回中のリアでの左右輪速差に応じて車体姿勢を制御するKPCを開発した。DYCは左右輪の制駆動力差によってヨーモーメントを付与するが,KPCは制御によって発生させる制動力が著しく小さい。このため,車両に発生するヨーモーメントは僅かであり,ヨー運動はほとんど変化しない。一方でヒーブについては,サスペンションジオメトリと組み合わせた増幅作用で,机上シミュレーション結果及び実車計測でも低減していることを確認した。 KPCはヒーブを抑制することで,ドライバーが体感する車両姿勢を安定させ,操舵を滑らかにする効果がある。先行研究(6)でも述べられているとおり,これまで検討してきた制駆動力制御による前後加速度やピッチに加え,ヒーブもドライバー操作に影響することが確認できた。参考文献(1) 梅津ほか : GVectoring Controlの開発,マツダ技報, No.34,pp.99-104(2017)(2) 梅津ほか : GVectoring Control Plusの開発,マツダ技報,No.36,pp.235-240(2019)(3) 藪中ほか : GVectoring 制御が人の視線や身体挙動に与える効果に関する分析,自動車技術会 2020年春季大会 学術講演会 講演予稿集,20215051(2021)(4) 芝端ほか : ヨーモーメント制御による車両運動性能の向上について,自動車技術,Vol.47,No.12,pp.54-60(1993)(5) 関谷ほか : ばね上3次元車両運動の簡易な記述式車両運動モデルによる運動評価,自動車技術会 2017年秋季大会 学術講演会 講演予稿集,20176253(2017)(6) 長島ほか : 制駆動力制御によるヒーブが操舵特性評価に及ぼす影響,自動車技術会 2019年秋季大会 学術講演会 講演予稿集,20196026(2019)■著 者■加藤 史律

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