マツダ技報 2022 No.39
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―194―1. はじめに2. 腐食環境計測システムの開発In order to ensure the anticorrosion performance of vehicles, it is necessary to quantify a corrosive environment and apply an anticorrosion treatment that surpasses what is required by the environment. To this end, we have developed a wireless device, which is easily detachable, for measuring the corrosive environment. We have also developed a methodology for analyzing big data such as measurement data, weather data, application amount of anti-freezing salt, etc. These enable us to infer the corrosive environment.Vehicle Testing & Research Dept.Ryosuke KikuyamaTakakazu YamaneKatsuhiro FukudaTakayoshi Nakamoto2.1 車両腐食環境計測の課題 自動車は移動体であり部位によって腐食環境が異なる。腐食環境計測のシステム要件として,定量的に計測ができること,複数の部位を同時に長期間測定ができることが求められる。この課題を,広く用いられている腐食セKey words:Materials, Iron and steel materials, Rust prevention, Anticorrosion, Measurement, Big dataDevelopment of Quantification Technique and Analysis Method 論文・解説32 自動車は世界中で使用され,さまざまな環境に曝される。腐食に関しては,沿岸部の海塩粒子や冬期の凍結防止剤が自動車にとっては過酷な環境となる。どのような腐食環境でも世界中のお客様に満足していただける防錆性能を確保するためには,自動車の防錆処理の性能が腐食環境に比べて高くなるように設定する必要がある。自動車は,使用される地域や部位ごとに腐食環境は異なる。一方,防錆処理には,亜鉛めっき,リン酸亜鉛処理,電着塗装,防錆ワックス,等さまざまな方法があるが,亜鉛に代表されるように資源枯渇の懸念があり,過剰な使用は経済的リスクのみならず,人間社会や地球環境の持続性という問題もはらんでいる。したがって,防錆処理を適正に設定するには,自動車各部位の腐食環境を定量的に計測し,それを分析することで腐食環境の特定を行い,その腐食環境に見合った防錆処理を自動車各部位に施工することが必要である。そのために,定量計測技術及び測定データの分析技術の開発を行った。*1~4  車両実研部 喜久山 良弐*1福田 克弘*2中本 尊元*3山根 貴和*4 まず,車載型の腐食環境計測装置を開発し,走行中の自動車各部位の腐食環境を定量的に測定できる腐食環境計測システムを構築した。このシステムを用いて,腐食に厳しい地域を実走行し環境データの収集を行えるようになった。実走行で得られた環境データと鋼板腐食量を紐づけるため,環境データから鋼板腐食量を予測する分析技術を開発した。更に,実走行では限られた地点のデータしか得られないため,走行している地域の気象データなどを因子として,環境データと気象データなどを関連付けて大規模データ分析する技術を開発した。本稿では,腐食環境計測システム及び計測データなどから腐食環境を予測し特定する分析技術について紹介する。要 約 自動車の防錆性能を確保するためには,腐食環境を定量化し自動車の防錆処理の性能が環境に比べて高くなるようにする必要がある。自動車が曝される腐食環境を定量的に測定するために,無線化により簡易に装着可能な腐食環境計測システムを開発した。また測定データや気象データなどの大規模データを分析する技術を確立し,腐食環境を予測することが可能となった。Abstractお客様の走行環境に応じた車両腐食環境予測手法の開発According to Corrosive Environment of Customers’ Vehicles

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