マツダ技報 2022 No.39
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 CX60には,ひとつのネームプレートでノンプレミアムからプレミアムに届くエリアまでの広い価格帯をカバーするという,他に類を見ない挑戦課題があった。そのため,幅広いお客様の多様なニーズに明確な価値をもって応えられるよう,デザインを組み上げる中でも戦略的にグレード展開を構想した。 全てのグレードで,根幹となる骨格や空間構成,高い面質などに,『Noble Toughness』をしっかりと表現した上で,グレード展開は大きく距離を持たせ,主な3つのグループに分けて考えた。 1つはノンプレミアム価格帯のベースグレードとし,あとの2つはプレミアム価格帯に,CX60の世界観を先鋭化した全く方向性の違うグレードを展開し,提供価値の幅を大きく広げた。6.1 ベースグレード  素材は奢らず,内外装に積極的に材着素材も採用して,アウトドアユースやオフロード走行等にも気兼ねなくしっかり使えるSUVとしての価値を創出した。ただし,材着樹脂素材などが決して安っぽい存在にならないよう,その造形,表面処理の創り込みには一切の妥協を許さず,丁寧に仕上げた(Fig. 15)。―12―Fig. 15 Base Grade6.2 プレミアムスポーツグレード  エクステリアはブラックパーツで精悍に引き締め,インテリアはタン色をブラックで引き締める,内外装に統一感あるスポーティーさを表現。内装のタン色部分にはスウェード調素材を,その一部にはキルティングも奢り,ラグジャリーな上質さを濃密に創りあげた。端的にいえば高級スポーツカーのエモーションをSUVに表現したグレードといえる。しかしその表現は,アグレッシブで他を威嚇するようなものではなく,しっかりと品格と強さをバランスさせ,大人っぽく仕上げた(Fig. 16)。6.3 プレミアムモダングレード  エクステリアは知的でモダンに,インテリアには日本のものづくり,マツダの考えるジャパン・プレミアムを表現した。それは自然がもたらす変化の一瞬に美を見出す日本人の美意識を基にデザインを考えることや,人の手によって創り出された温か味を感じさせること。例えば,変わりゆく季節の光の移ろいの一瞬に美を見出す感覚を織物の素材に表し,造形と相まって季節や時間による変化に対して敏感に柔らかく反応する美しい瞬間を生み出すこと。また,織物を一定の間隔をあけて留める「掛け縫い」などに匠の技を表すことなどである。複数の素材の配色を絞り,整然と整頓,調和させる「諧調」と,その調和した空間にあえて一部異質なものを織り込んで心地よい変化を持たせ,空間にリズムやダイナミズムをつくる「破調」も取り入れた(Fig. 17)。6. グレード展開Fig. 16 Premium Sports GradeFig. 17 Premium Modern Grade

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