マツダ技報 2022 No.39
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4に示すような複雑な形状のウォータージャケットの場合,流速の分布がつきやすく,流速の変化をとらえて分割した流体モデルが有効といえる。(2)温度分布予測のアプローチ バッテリーは複数個のセルから構成する性質上,構成部品数が多く,モデル構成が複雑になる傾向がある。そのため,各セルからの主要な放熱経路の特定が難しく,モデルの構成(分割数,要素間の接続など)や接触部の熱抵抗の決定に課題があった。その結果,セルごとの温度ばらつきの再現ができず,この課題に対して3DCAEを用いた改善を図った。バッテリー内の熱経路の把握を目的に,Fig. 8に示すようにバッテリー全体の3DCAEモデルで熱伝導解析を行い,バッテリー内の温度分布を確認した。Fig. 9に,3DCAEでの解析結果から再構成したモジュール内のモデルを示す。元のモデル構成に対して各部の要素数と熱経路を増やすことで,セルごとの熱移動量に差異が生じ,セル温度の分布を予測可能な構成とした。(3)モデルの妥当性検証 Fig. 10に,モデルの妥当性検証のため,実車走行時のセルの実測温度をモデルと比較した結果を示す。セル間の温度ばらつきの再現性を確認するために,車両に搭載した状態でバッテリー内の各セルの温度を計測した。セルNo.1(濃線)はモジュール内の端側,セルNo.2(薄 Fig. 7に,対象バッテリーの熱モデルを示す。モデルの考え方はモーターと同様に,各構成部品の熱容量と各接点間を結ぶ熱抵抗からなる伝熱モデルと,冷却部での放熱量を計算する流体モデルから構成する。各モジュール,各セルに要素を分割し,それぞれのセルに対して発熱量を与えている。なお,発熱量はバッテリーの内部抵抗特性と入出力する電力により算出する。また,冷却部―209―Fig. 5 Comparison Result of Motor Coil Temperature between Experiment and Simulation4.2 バッテリー:3DCAEによるセル間温度分布の xEVで用いるバッテリーでは,高出力を実現するために,複数個のバッテリーセルを直列,並列に編成した構成を採用する。そのため,セルの位置ごとの冷却面積の違いにより,温度のばらつきが生じてしまい,セルごとの熱管理が必要となる。また,車両の駆動力や熱マネの制御には特定のセルの温度を用いるため,車両内でのエネルギーの流れや温度挙動を正確に予測するには,セル間の温度差を表現できるモデルが求められる。本節では,3DCAEを活用して,バッテリー熱モデルでのセル間の温度分布を予測可能とした手法について紹介する。(1)モデルの構成 MX30のバッテリーの構造をFig. 6に示す。MX30では,バッテリーパック内に16個のモジュールがあり,下面部に冷却機構として空調システムからの冷媒配管を配置している。なお,モジュールとは複数のバッテリーセルが集合した部品であり,1個のモジュールあたり12個のセルから構成する。Fig. 6 Configuration of MX30 Battery PackFig. 8 Thermal Conductivity Simulation Result of Fig. 9 Configuration Comparison of Battery Thermal Fig. 7 Battery Thermal 1D ModelBattery by 3DCAE1D Model予測は空調システムの冷媒を用いるため,相変化による熱伝達率など特性の変化を考慮している。

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