マツダ技報 2022 No.39
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―13― 玉谷 聡 7. 込めた思い8. おわりに ミドルクラスSUV市場は,これまで世界の名だたるブランドが威信をかけた製品を投入してきた,まさに強豪ひしめく市場であり,CX60はここにほぼ最後発として参入する。表現の強さや斬新さを競う競合に対し,「引き算の美学」「日本の美意識」を追求するCX60のデザインが表現しようと挑戦したのは,骨格や空間構成といった造形の根本から磨き上げる,いわば内面から滲み出る美しさであり,CX60のデザインチームはそれらを深く追求し,丁寧に組み上げ,研ぎ澄ませてきた。この,即席では組み上がらない根本からの美しさをもつCX60を,ミドルクラスSUVの新たなスタンダードを示す気概を持って世に送り出した。 CX60が,マツダブランドを次なるステージへと押し進める確かな第一歩となることを願っている。 デザイン出図がほぼ終わり,設計,生産部門とともに品質を確認するタイミングでは,世界に新型コロナウィルスの感染が拡大し,デザイン意図の後工程への伝達もWeb形式となっていた。そんな中,各プログラムで設計,生産,サプライヤー様とともに連携してフィジカルとデジタルの精度の相互確認を重ねてきた自主的活動,「面のアーティスト活動」は,フィジカルな集まりが持てないことから一時滞った。試作段階での面の出来栄えにその悪影響が現れはじめる状況にあったため,水際で呼びかけさせていただき感染対策をして活動を再開。キャッチアップを行う中で,やはりマツダの品質を最終レベルに到達させるのに不可欠なのはオフィシャルなプロセスを超えた,意識ある人による連携以外の何物でもないことを実感した。これからも同様の事例は起こるであろうが,動揺することなく最高の品質を確保する方法を模索し続けなければならないと強く感じた。■著 者■

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