マツダ技報 2022 No.39
230/275

(2)エネルギー流れの予測 本項では,(1)項で提案した可視化手法から,詳細にエネルギー流れの予測を試みる。Fig. 6は,Fig. 5の分割領域のうち,U*値が0.0-0.1の区間を緑色,0.1-0.2の区間を赤色,0.2-0.3の区間を青色で示したものである。フレーム稜線部の点aでは,周辺と比べU*値が大きくなっているのが分かる。点bも同様である。荷重は剛性の高い部分でより多くの荷重を受けもつと考えられるので,点a→bのように周辺に比べU*値,つまり剛性の高い山部を入力点から固定点に追っていくことでエネルギー流れを予測できる。今回の場合,エネルギー流れが形成される部位は各稜線部であり,2.1節で説明した,ねじり剛性の理論と一致しており妥当であるといえる。(3)性能向上に寄与する部位を発見する手法 本論文の目的である,性能向上に寄与する部位の発見のためには,エネルギー流れを把握しエネルギーが流れていない部位を特定する必要がある。ここでは,エネルギー流れの有無の判断方法と性能向上に寄与する部位を発見する着眼点について説明する。Fig. 7は,自動車車体構造のフレームを単純化したアウターフレームとインナーフレームの二重構造をもつハット型断面フレームに,境界条件として,長手方向の端点の一方を6自由度完全固定し,もう片方の端点に軸中心まわりのねじり荷重を与えたものである。その時の提案手法の適用結果をFig. 8に示す。領域分割数は40で,0.200-0.225の範囲を青色で示している。2章で,エネルギー流れの予測には,周囲に対して剛性の高い山部を見つけることが重要であると述べた。それを基に,Fig. 8を見ると,(a)のアウターフレーム(A部)に比べ,(b)のインナーフレーム(A′ 部)の山部が顕著になっていることが分かる。これ(1)分割手法と可視化手法 性能向上に寄与する部位を効率的に発見する技術として,U*値を十数個~数十個の領域に均等分割し,動的に可視化する手法を提案する。本手法を用いて,点接合のフランジをもつハット型断面フレームに適用した事例をFig. 5に示す。これはU*値を10分割した時の結果を示しており,分割した各領域(青色部)をU*値の高い方から低い方に動的に表示することで入力点から固定点へのエネルギー流れを疑似的に可視化できる。本手法は,設計者がインタラクティブに操作できるようにするため,有償ポストプロセッサーAnimator4と連携させたシステムで構築しており,設計者が見たい領域だけを表示させて見ることも可能で,詳細分析による効率的な設計知見の発見を可能にする。―221―(a)Hinge pillar(c)Center pillarFig. 3 Cross-section of a Car Body2.2 力学的エネルギー流れの動的可視化手法の提案 自動車車体構造は,Fig. 3に示したように多角断面を成しており,2.1節でも述べたように稜線部(角部)が平面部と比較してエネルギー流れが形成される構造になっている。また,近傍の稜線部は,同時にエネルギーが流れるように設計されている。つまり,U*解析によって,同時にエネルギーが流れているか否かを明示し,稜線部間の比較が可能になれば,剛性低下の要因となる構造の発見につながると考える。この考え方を基に考案した提案手法のフローをFig. 4に示す。本手法は,領域分割,動的可視化,エネルギー流れの予測,性能向上に寄与する部位の発見に大別でき,(1)項より詳しく説明する。Fig. 4 Flowchart of the Proposed Method(b)Front pillar(d)Side sillFig. 6 Prediction Method of Energy FlowFig. 5 Visualization Method

元のページ  ../index.html#230

このブックを見る