マツダ技報 2022 No.39
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―226―2. 解析方法3. 解析結果8.Bpillar Up7.Bpillar C111.Beltline Bar10.Impact Bar1.Hinge Up2.Hinge Center3.Hinge Low4.Sidesill 5.Bpillar low6.Bpillar C29.Sash 12.Bpillar Up21.Rr.Impact Bar19.Sash 13.Bpillar C118.Rr.Body117.Rr.Body220.Rr.Bar16.Sidesill 15.Bpillar low14.Bpillar C2Cause Result Center of Driver’s Seat Past Current Future X11 X12 X13…Y11 X21 X22 X23…Y22 X31 X32 X33…Y33 Remaining distance Initial of Bpillar inner After Impact of Bpillar inner Y33 X33 X22 X11 X12 2.1 解析フロー 分析手法の検討順序は,➀衝突解析による教師データの取得,➁応答曲面を用いたデータ補間,➂グラフ構造化分析を用いたデータ解析の3段階で進めた。 入力因子は,21分割したドアパネルの板厚とした(Fig. 1)。説明変数は,ドアパネルと車体フレームの各断面における荷重やモーメント,及びドアと車体フレームとの接触荷重のそれぞれ10msごとの各値とした。出力因子は,衝突後の残存距離(Fig. 2)。シート着座中心から車体フレームが車室内に最大変形した位置との距離やドア移動量とした。因子数は,入力因子が21個,説明変数が485個,出力因子が163個の計669個とした。 衝突条件は,Insurance for Highway Safety (IIHS) の側面衝突プロトコルに基づき,ハニカムバリアの質量を1900kg,衝突速度を60km/hとした。衝突解析は,汎用非線形解析ソフトウェアであるLSDYNAを使用した。Fig. 1 Door Panel Parts of Input Factors2.2 グラフ構造化分析 グラフ構造化分析は,時系列データをはじめ連続量をもつような複数の因子のセットに対し,多水準系にカテゴリ化(離散化)した上でベイジアンネットワークの構造をBDeu (Bayesian Dirichlet equivalence uniform) スコア最大化に基づき学習するとともに,着目したい変数(子ノード)に辿り着く因子(親ノード)の階層構造を自動的に抽出可能な分析手法である(1)。階層構造のイメージは,過去の因子をX11~1nとY11,現在の因子をX21~2nとY22,未来の因子をX31~3nとY33とするデータを例にとると,着目したい因子(親)Y33に対して,関係をもつ因子(子)がX22やX11が選出され,因子間を線で結ぶことで視覚的に把握できる状態を示す(Fig. 3)。3.1 衝突解析による教師データ取得 衝突解析による教師データは,ドアパネル各部位の板厚分布を0.3mmから3.0mmまで離散化幅を0.1mmとし,ランダムに変動させた220パターンをLSDYNAで解析した。 得られた解析結果は,ドアパネルの質量と衝突後の残Fig. 2 Remaining DistanceFig. 3 Image of Hierarchical Structureより異なるため,荷重伝達経路に影響すると考える。そこで,ドアパネルの強度分布と,ドアパネルから車体フレームへの荷重伝達経路との関係導出を課題とした。 衝突現象の解明は,車両各部位の発生荷重や変形量の複数因子,更に各因子の時間変動も含めたデータを仕様差異(今回の検討ではドアパネルの強度分布)から分析する方法がある。しかし,剛性観点では位相最適化と荷重伝達指標Ustarを用いた報告(4)はあるが,衝突現象において扱う非線形な時系列データを分析する手法の報告は少ない。そこで,統計探索手法のひとつであり,データの離散化と標準化によりベイズ理論に基づいた分析が可能であるグラフ構造化分析手法(1)に着目した。本稿では,グラフ構造化分析により,車体フレームの任意部位に荷重を伝達するためのドアパネルの主要部位の選出,及び荷重の伝達経路を明らかにしたので報告する。 本解析においては,ドアパネル部位,ドアパネルや車体フレーム各部位の断面荷重やモーメント,ドアパネルと車体フレームの接触荷重,衝突後の残存距離やドア移動量の因子セットに対し,グラフ構造化分析を適用することで,着目したい出力因子である衝突後の残存距離やフロア断面荷重に対して時刻歴とともに因子のつながりを解析した。

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