マツダ技報 2022 No.39
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―231―2. 接着剤開発Fig. 1 Crevasse Defect at Adhesion Fillet(4)Fig. 2 Conceptual Function Model on Shielding and Adhesion against Corrosion2.1 接着欠陥発生率と外観耐食性との関係 合金化溶融亜鉛めっき(以下,GA)鋼板の平板に,接着剤を直線塗布後,GA鋼板のL形状の曲げ板を重ね合わせ,スポット溶接し,化成処理と電着塗装後,加熱し重ね継手試験片を作製した。この接着試験片を用いて,塩水噴霧と乾燥,湿潤の各モードを組み合わせた複合サイクル試験(以下,CCT)で外観の腐食状態を評価した結果,溝欠陥の発生率が高いほど腐食抑制期間Lが短くなり,腐食進展速度θは速くなった。具体的には,従来の車体構造で多用しているRSWのみの重ね継手試験片が示すLoと θoに対して,接着剤を併用した場合でのLadと θadの各比率をFig. 3に示す。欠陥発生率が0に近づくほど,RSWのみより優れたLとθを示している。そこで耐食性向上をねらいとして溝欠陥発生のメカニズム解明に取り組んだ。Fig. 3 Cosmetic Corrosion Performance against 2.2 溝欠陥の発生メカニズム(4)(5)(1)欠陥発生の要因 溝欠陥が発生する,ある接着剤を用いた簡易検討から,接着の「流動性」と「形状保持性」がポイントであることが分かった。 具体的には,接着のはみ出しを除去した状態でFig.1の20℃から100℃へ昇温すると,2枚の鋼板被着体間の隙間は昇温とともに狭まっていき,それに伴い接着剤が合わせ面から流出しはみ出しを形成する。一方,接着剤がはみ出た状態で硬化のため室温から昇温していくと,はみ出した先端部の形状をほぼ保持したまま流出していくことで溝欠陥が形成する。水平と垂直,加熱硬化時の試験片の向きはどの場合でも同等の溝欠陥が生じた。 暴露環境としては,接着剤を鋼板に塗布,未硬化状態で40℃ 85RH%の耐湿環境に数日間仮置きし吸湿させたCrevasse Defect Rate手の接着はみだし部に発生する場合がある(4)(5)。加熱中の欠陥形成を観察した結果,Fig. 1の➁に示すように,加熱中100℃前後で明瞭に溝欠陥が形成する。Fig. 1の➂に示すa-a箇所にて溝欠陥部の断面を観察すると,上板側のめっきが存在しない鋼板端面では,腐食因子に対する保護性が低下している。それによって溝欠陥部は腐食起点となり,腐食が接合界面へ進展していくと,最終的には継手機能を損なう可能性がある。 そこで,塗膜における防錆モデルベース研究(6)を参考に,腐食の抑制期間と進展速度を評価指標とした接着欠陥抑制の研究に取り組んだ(Fig. 2)。本報では,これまでに解明した溝欠陥の発生メカニズムを基に,耐食性に優れた車体剛性用の1液熱硬化型エポキシ系構造用接着剤を開発した内容を報告する。

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