マツダ技報 2022 No.39
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2ω(’/)E2ω("/)E|=+’”ω η*|(2)形状保持性に関するレオロジー比較 流動性の変化をとらえるために測定したFig. 4での複素粘度 η*とは,角振動数 ω,貯蔵弾性率E’,損失弾性率E”を用いて複素数表示すると式(1),複素粘度の絶対値(本報内では,複素粘度と記している)は式(2)で表される。(1)(2) そして,貯蔵弾性は形状保持性の指標である。ある熱硬化型のエポキシ系接着剤を例に,加熱硬化時の複素粘度の絶対値,貯蔵と損失の弾性率についてそれぞれ,20℃時の値に対する保持率をFig. 7に示す。複素粘度(1)の保持率が最低を示す70℃近辺で,貯蔵弾性率(2)の保持率は0.9,損失弾性率(3)の保持率は0.12を示し,温度に対する複素粘度の低下は損失弾性率の温度に対する低下現象と言える。更に損失弾性率E”を貯蔵弾性率E’で割った値(損失正接)について,最低複素粘度時は1より小さい値を示しているため,複素粘度自体の最低値は貯蔵弾性率自体の大きさに支配されていることが分かる。η*=E”/ω-iE’/ω ωη―232―Fig. 4 Minimum Complex ViscosityFig. 5 Tree Diagram of Crevasse DefectFig. 6 Minimum Complex Viscosity (a: no defect, b and c: crevasse defect)Fig. 7 An Example of Temperature Dependence of Rheology Normalized to the Value at 20°C後,相手部材を重ねてRSWで固定,Fig. 1の加熱を行うと,加熱硬化時の100℃前後において接着層内に発泡し溝欠陥は発生した。 簡易検討をもとに,接合部の構造(上板板厚,RSWのピッチ)と接着剤材料(粘度特性,吸湿放置日数)の各要因を組み替えた接合試験片を作成し加熱硬化させ溝欠陥を比較した。また,各接着剤の流動性を把握するため,20℃から150℃まで5℃/分で加熱しつつ,材料の微細構造変化への影響が小さいと考えた動的条件にて複素粘度(Fig. 4)を測定した。これらの結果から明らかになった,「流動性」「形状保持性」の観点から溝欠陥発生要因をFig. 5に示す。構造要因として2つあり,板厚が薄い場合と,スポット溶接ピッチが長い場合。一方,接着剤の材料要因として2つあり,加熱過程における20℃から100℃以下の範囲で複素粘度が最も下がった時の値(Fig. 4)が高い場合(Fig. 6)と吸湿発泡の体積が大きい場合である。 そこで,形状保持性の観点から貯蔵弾性率が変形に対してどう推移するのか把握した。具体的には,吸湿による発泡が生じる温度100℃より低い90℃にて,レオメーターを用いてせん断ひずみを1.0Hzで0.1%から100%へ増幅させながら貯蔵弾性率を測定した(Fig. 8)。溝欠陥を発生する接着剤は,欠陥を発生しない接着剤に対してせん断ひずみが0.1から5%の範囲で高い貯蔵弾性を示した。このことから,溝欠陥が発生する接着剤では,接着剤が流出しはみ出し部の変形が進行しているときに貯蔵弾性率が高いため,はみ出し部の外観を保持しやすい状態であることが分かった。

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