マツダ技報 2022 No.39
243/275

麻川 元康 渡邊 伸明 (1) 氷室雄也ほか:減衰性に優れた構造用接着剤の開発,自動車技術会学術講演会予稿集(2019),20195137(2) 中川興也ほか:車体の減衰制御構造の開発,自動車技術会学術講演会予稿集(2019),20195136(3) 山本研一ほか:構造接着を用いた車体振動減衰技術の開発,マツダ技報,No.36,pp.283-288(2019)(4) 麻川元康ほか: 自動車における車体構造部の接着欠陥発生に及ぼす粘弾性の影響,日本接着学会年次大会講演要旨集,pp.113-114(2021)(5) 麻川元康ほか: 自動車における構造接着技術の動向と課題,日本接着学会誌,Vol.57,No.5,pp.184-192(2021)(6) 浅田照朗ほか: 塗装部の耐食性迅速評価技術のモデルベース研究開発,マツダ技報,No.38,pp.133-138(2021)(7) 日本国特許第6191639号(8) 麻川元康ほか:耐食性に優れた構造用接着剤の開発,自動車技術会学術講演会予稿集(2022),20225301(9) 村地勇佑ほか:耐食性に優れた構造用接着剤の開発,日本接着学会年次大会講演要旨集,P37B(2022)―234―98%RH4. おわりに3.2 耐湿接着強度 電着塗装を施工していないせん断接着試験片を70℃相対湿度98%で3週間暴露した後,耐湿接着強度特性を確認した(Fig. 12)。開発した接着剤の仕様では,せん断接着強度は暴露後ほぼ低下せず,界面剥離面積率も従来の接着剤剤での仕様より少なくなった。同様の改善は,70℃純水浸漬試験後でも確認できた。 耐湿・耐水接着強度を向上したことは,腐食生成物の成長による接着層と金属との界面割裂に対する抵抗力増加につながり,溝欠陥以外の欠陥(樹枝模様の空隙欠陥,RSW時の中ちりによる接着貫通穴)発生時でも腐食進展速度の減速に寄与していると考える。Fig. 12 Retention of Lap Shear Strength and Cohesive Failure Area Rate after 3 Week Exposure at 70°C, 参考文献古賀 一陽 長友 博之  接着の機能を,「接合面内を外界から遮蔽しながら被着体どうしを密着させること」ととらえ,これらによってウエット環境下での,耐食性及び接着強度が発現していると考えた。そこで,遮蔽性低下の要因となる接着欠陥のうち,加熱硬化過程で生じる溝欠陥の発生メカニズムを解明することで,以下3点の知見を得た。➀溝欠陥は,加熱過程での硬化反応によって粘度増加が顕著に発現する温度より低温側で発生する欠陥である。➁溝欠陥発生の材料的主要因は,100℃以下での高い貯蔵弾性率と,100℃で生じる吸湿発泡による体積増加である。➂室温から昇温した時の複素粘度の最低値は,貯蔵弾性率が支配している。 これらの知見から,最低複素粘度値の適正化,吸湿発泡の抑制を具体化する配合開発を実施し,併せて密着性向上も検討することで,耐食性に加え耐湿・耐水劣化性に優れた1液加熱硬化型エポキシ系の車体剛性用の構造接着剤を開発した(8)(9)。 最後に,接着剤の共同開発先であるセメダイン(株)に厚く感謝の意を表します。■著 者■福田 克弘江﨑 達哉

元のページ  ../index.html#243

このブックを見る