マツダ技報 2022 No.39
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(3)PCS PCSの主な仕様をTable 2に示す。今回,リユースバッテリーとつなぐため,リユースするパックの特徴である異なる性能(劣化状態等)を加味し,パックの性能に応じた運用が求められる。そのため,最も望ましいシステム構成として,直流回路の構成では1つのDCDCコンバーター(以降:DCDC)に対し,1つのパックである。しかし,この場合では,DCDCの数が増え,リユースバッテリーの本来のコストメリットが小さくなる。一方で,1つのDCDCに対し複数のパックを繋げるシステムは,性能が最も悪いパックに引っ張られ,システム全体の効率が悪くなる。上記を鑑みて,状態が近い2つのパックを1つのDCDCにつなげる構成とし,効率とコストの両立を図ることとした。また,使用過程でパックに異常が起きてもシステムが稼働可能となるように,DCDC単位の切り離し及び並列する2つのパックの片方の切り離しを可能とした。更に,自然災害などの停電時においても,重要業務の継続ための備えとして自立運転機能も搭載した。―242―2. 定置型蓄電池システムの構成ItemcontrollerCANEthernetModel / SpecificationsPXIe-8821PXIe-8510, 6+2portPXIe-8234, 2-Port Gigabit2.1 蓄電システムの全体構成 今回の実証試験は,EV駆動用バッテリーのリユースによるコストメリットを最大化するため,ハード的な接続やソフトの変更規模を最小限に留めつつ,8台のEV駆動用バッテリーパック(以降パック)を,2台並列接続して4つの直流電源とした。それぞれの直流電源を,Power Conditioning System (PCS) とつなげる蓄電システム構成とした(Fig. 1)。Fig. 1 Storage System Configuration2.2 システム構成部品の紹介(1)EV駆動用バッテリー リユースに用いるEV駆動用バッテリーは,マツダが2012年10月に日本国内でリース販売した電気自動車「デミオEV」に搭載されたリチウムイオンバッテリーを使用することとした(3)。本パック(Fig. 2)は,総公称電圧346V,容量20kWh,空冷方式を採用している。Fig. 2 Configuration of Battery Packの劣化特性の解析評価及びEV駆動用バッテリーのリユースに向けた今後の課題について説明する。 今回リユースに使われるパックは,自社開発した遠隔操作システム(4)の情報より,パック全体の容量維持率が高いものから選別した。これらのパックは,新品パックほど性能均一ではないものの,バラツキは小さいことが分かった。従って,リユースするのに十分な性能があると判断した。(2)統合コントローラー 複数のパックを束ねてPCSと通信するため,各パックの状態を監視する統合コントローラーが必要であり,今回新たに作製した。本統合コントローラーは,CAN通信方式を採用しているパックとModbus/TCP通信方式を採用しているPCSを繋ぎ,CAN通信とModbus/TCPとの通信プロトコルを変換し送受信する機能をもつ。今回,その機能を満たすナショナルインスツルメンツ(NI)製PXIeシステムを採用した。 本統合コントローラーの主な仕様をTable 1に示す。統合コントローラーは,起動中にそれぞれのパックのState Of Charge (SOC) や電圧及び充放電可能電力などを読み込み,PCSに送信するとともに,各パックの故障診断を行う。また,各パックの状態及び故障種別をPCSに送信できる機能及び定置用システムとして運用していく中で重要なデータをロギングする機能も併せてもつこととした。Table 1 Main Specifications of Integrated Controller

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