マツダ技報 2022 No.39
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b)パック間の容量バラツキ 今回のシステムは,1つのDCDCに対し,2つのパックを並列接続して使用した。このように複数のパックで構成されるシステムでは,パックの制御電圧は同じであってもパックの劣化状態が異なるため,両パック間で容量差が生じる。例えばFig. 5に示すように容量の多いパックAと容量の少ないパックBを並列につなげて運用したときに,両パックでは,それぞれの受け入れられる充放電の量が異なる。このように,それぞれのパックに異なる負荷がある状態で長期使用した時の,両パックの間で生じる容量差の変化を定量評価して,パック間の容量バラツキを明らかにする。―243―Rating or PerformanceVoltage type self-excited PWM current control methodForced air cooling400kVAThree-phase three-wire240V~420V3. リユースバッテリーの特性評価手法の開発3.1 リユースバッテリーの課題3.1.1 車両用途と定置用の劣化傾向の把握 車両用途では,バッテリーの電欠に対応するため,低いSOC領域まで使われる頻度は少ない(Fig. 3上図)。これに対し,定置用途ではさまざまな使われ方が想定される。例えば,ある特定の充放電深度で周期的に充放電を繰り返すような使われ方などが考えられる(Fig. 3下図)。上記を踏まえると,EV駆動用バッテリーを定置用としてリユースされる場合,異なる使い方によるバッテリーの劣化傾向を,事前に把握しておくことが重要と考える。Table 2 Main Specifications of PCSItemCircuit MethodCooling MethodAC RatingRated CapacityPhase NumberDC RatingFig. 3 Example of Battery Usage3.1.2 有効容量の定量化 一般的にEV駆動用バッテリーは,使用環境条件などにより同一パックであってもパック内のバッテリーセル(以降セル)間で容量差が生じると考えられる。そのため,リユースするパックの有効容量を把握するには,リユースバッテリーの特徴であるパックごとの性能バラツキを考える必要がある。また,リユースバッテリーを定Fig. 4 A Condition of Battery Cell Balance置システムの蓄電池として用いる際に,より大規模な用途へ拡大するため,複数のパックを並列接続して用いることが想定され,このような使い方にも考慮する必要がある。そのため,長期使用したときに,パック内のセルの容量バラツキを踏まえた有効容量の定量化や異なる劣化状態で並列接続されるパックごとの有効容量の定量化を見極めることが,バッテリーをリユースする際の重要課題と考えた。 そこで,今回の実証試験では,パック内のセル容量バラツキと並列されたパックごとの容量バラツキを評価指標とし,定量評価を行った。それぞれの評価指標について以下説明する。a)パック内のセル容量バラツキ EV駆動用バッテリーは,車載用途で充放電を繰り返されるため,リユース時のパック内のセル容量は,初期のように全てのセルは均一な容量を保たれなくなる。これによりパック内で直列接続された多くのセルに容量差が生じる。このようなセルの容量差によって,パックの使用可能なバッテリー容量が減少する(Fig. 4)。そのため,長期使用を想定した二次利用においてパック内セル容量を把握し,セルの容量差を評価指標とし,定量評価して,パック内の容量バラツキを明らかにする。

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