マツダ技報 2022 No.39
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b)パック間の容量バラツキ Fig. 12に同じ充放電サイクルパターンの異なる2つのパックのバラツキ幅を示す。パック間の容量の変化幅も,サイクル数の増加に伴って,増加傾向であった。一方,並列接続された2つのパック間でのバラツキについて,リユース始めたときの2つのパック(Pack3,Pack4)の容量バラツキはそれぞれ7%,8%であったが,その後250サイクル後は12%と13%,500サイクル後15%と15%となり,パック間に大きな差はないと確認できた。―246―Fig. 13 Results of Variation between Battery Packs また,並列接続されるパックでのバラツキ幅に大きな差が生じなかったことを確認した。これはバッテリーの劣化に伴って内部抵抗は増加し,相互の抵抗状態に応じてバランスを取りながらパックへ充放電できたと考えられる。その結果,両パックは,仕事分担に応じて劣化するため,それぞれのパックのバラツキ幅の増加も抑えられたと解釈できる。4. 駆動用バッテリーのリユースに向けて 今回,EV駆動用バッテリーをリユースして,定置用途の運用におけるバッテリーの劣化特性を把握することができた。今後,今回の実証試験での知見を活かし,より有効にバッテリーを使い切るための運用の仕方などを研究する必要があると考える。また,リユースする蓄電池システム構築のため効率化と低コスト化が必要と考える。そのため,車載部品の設計時に,リユースを想定した設計も求められる。特に,駆動用バッテリーにおいて,大規模な定置用蓄電システムに統合するための統合コントローラーやBMS (Battery Management System) とのインターフェースの統一化,更にフレキブルなバッテリーの配置を目指した通信の無線化やモジュール単位でのリユース検討などが挙げられる。更に,リユースバッテリーの選別において,低コストかつ高効率で行う必要がFig. 11 Results of Variation in Battery PacksFig. 12 Results of Variation between Battery Packs3.3 評価試験結果に対する考察 EV駆動用バッテリーを定置用システムの蓄電池としてリユースした場合,パック容量の平均値(CAPave)について,車載用途も定置用途も同じ劣化傾向であった。また,CAPaveの劣化推移は,定置用途においても車両用途で構築した劣化予測モデルで予測できることを確認できた。これは,車載用途で構築した劣化予測モデルは,バッテリーの主劣化要因である電圧,温度,電流の物理法則をベースとしたことによる影響が大きいと示唆される。 一方,各パック内のセル容量のバラツキ幅は,繰り返し充放電に伴って大きくなることが明らかとなった。これは,使い方による影響が大きいと考えられる。今回のサイクル試験では,BパターンとCパターンの違いはSOC範囲以外に,充放電レートの違いがある。一般的に環境温度一定の時は,電流レートが高いバッテリーの方は自己発熱が大きく,自己発熱の影響で劣化が進行しやすい。しかし,今回の結果(Fig. 10)は逆であった。その原因について充放電サイクル履歴を調査したところ,今回のような1サイクル2時間かかる(0.5C以下)試験においては,環境温度を一定にすることでバッテリーの自己発熱による劣化への影響が小さいことが分かった。一方,二次利用時のバッテリーの抵抗が大きいため,ゆっくり充放電したBパターンの方は,Cパターンより過電圧Vovによる影響が小さく,充放電サイクル中の休止時の電圧値から正極は低い電位,負極は高い電位まで放電したことが伺える(Fig. 13)。これにより,バッテリー電極の活物質の奥までLiの挿入脱離したBパターンの使い方は,パック内で劣化進行しやすいセルが生じる可能性が高い。そのため,パック内のセル容量バラツキ幅が増加したと推測される。

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