マツダ技報 2022 No.39
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mN , euqroT ssoL noitcirF)gk(enigne)gk(enigneeht feht fo ssaMo ssaM(2)技術進化 シリンダーライナーへの溝形状追加と冷却用クロスドリル径の縮小により,同製法のディーゼルエンジンではクラストップレベルであるボア間肉厚8mmを実現し,エンジン全長の短縮化を実現した。また各構造部品は作用力に対して機能目標を制約関数とし,肉厚を徐変しながら最小重量で機能成立する最適化解析を行い仕様決定した(Fig. 4)。これらの結果,SKYACTIVD3.3はトルクvs重量のトレンドラインに対してBIC(ベストインクラス)を,排気量vs重量のトレンドラインに対してクラストップレベルを実現した(Fig. 5)。―30―NewModelPreviousModel200300400500600 PreviousModel7001.41.92.4NewModel2.9Displacement(L)3.43. ブレークスルー技術Torque(Nm)Previous2.2 L3NmOthersMassBralancerOil PumpPistongroup andConrod bearingsCrankshaftNew3.3 L2.3 搭載性 直列6気筒縦置きのパッケージを実現するために,ボアピッチ縮小によるエンジン全長の短縮に加えて,クラッシャブルプーリーによる衝突安全性の確保,ドライブシャフトが貫通したオイルパン構造とすることで,AWDでも2WDと同等のエンジン全高を実現した。また各部品の寸法を切り詰め,フロントデファレンシャル及びプロペラシャフトをエンジンセンターに限りなく寄せる構造とすることで,人馬一体の一丁目一番地であるアクセルペダル理想位置の確保を実現した(Fig. 7)。3.1 可変油圧システムの開発 Fig. 8に油圧システム回路を示す。ピストンのスチール化に伴う高負荷域でのピストン冷却性の強化(ピストンクーリングオイルジェット流量増大)と,直列6気筒Fig. 3 Cylinder Pressure LimitationFig. 4 Weight ReductionFig. 5 Engine Mass2.2 機械抵抗の最小化 ピストン材質をアルミからスチールへ変更し,冷却損失の低減だけでなく,ライナーとのクリアランスを最適に制御することで全体の約1/3を占めるピストンの摺動抵抗を低減した。また新開発した低粘度オイルを可変容量オイルポンプで緻密に油圧制御することで,各摺動部の信頼性を確保しながら機械抵抗低減を実現している。加えて冷却水制御バルブやウォータージャケットスペーFig. 6 Engine FrictionFig. 7 Package性能に機能配分することによる最大トルクの適正化,ゆとりあるトルク特性を活かしたエンジン保証回転数の適正化を行い,部品への作用力をミニマム化した。サーにより暖機性を改善することで実用領域も考慮した機械抵抗低減を実現している。更に,直列6気筒化によりバランスシャフトを廃止することができ,排気量増加にもかかわらず,前モデル比低減し,クラストップの低機械抵抗を実現した(Fig. 6)。 以降の章では,上記機能進化を実現したエンジン内部構造技術として,可変油圧システムの開発,スチールピストンの開発及びクランクシステムの開発を中心に紹介する。

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