マツダ技報 2022 No.39
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N/s/dar―33―0Previous 2.2Ldecrease200400600frequency(Hz)New 3.3L8001000Fig. 16 Resonance Characteristics of Crank System 一方,ねじり共振周波数を常用域以外に配置するためにはクランクシャフトの剛性を大幅に変更する必要があるが,大幅な重量増加を伴うため現実的な解決策とはなりえない。このため,クランクシャフトの基本諸元は現行の4気筒ディーゼルエンジンを踏襲し,増大する角速度変動はダンパープーリーで減衰することを基本構想として仕様検討した。また,衝突要件を成立させるため,ダンパープーリーはクラッシャブルタイプのゴムダンパーを用いた構造を選択した。(2)角速度変動予測モデルを用いた最適システムの設計 今回の開発では,開発構想段階でモデルによる角速度変動を精度良く予測できるようにし,この結果を元に関連システムの信頼性や異音などの成立性/余裕度を検討することで,クランクシステム全体の最適化を行った。角速度変動の予測モデルは開発初期に試作6気筒エンジンを用いてクランクプーリーやFEADシステム,フライホイールなどの詳細挙動の計測・分析を行うことで解析パラメーターの調整を実施するとともに,システム間の相互影響を検証し各システムのモデル化規模やモデルの連成範囲・条件の改善を実施した。この結果,各システム間の相互影響も含め高い精度による角速度変動の再現が可能となった(Fig. 17)。 高精度のモデルを用いてシステム各部位の信頼性や異音の成立性/余裕度を設定した上で(Fig. 18),Table 2に示すように開発構想を具現化した設計諸元を決定した。Fig. 14 Piston Skirt Clearances in COLD/HOT Situation, and Its Contact to Cylinder Boac. ディーゼルノック音の対策 ディーゼルノック音低減のため,これまで燃焼加振力の低減や,ピストンピン内部に装着しダイナミックダンパーとして機能するナチュラル・サウンド・スムーザーを採用してきた(7)。今回スチールピストンを新たに採用するにあたり,往復系部品の共振周波数コントロールによる対策を行った。ノック音は,燃焼圧による加振力がピストンからピストンピン,コンロッド,クランク,ブロックへと順に伝達し,最終的にブロックの外壁で放射音に変換されることで音として知覚されるようになる。その際ピストンからコンロッドまでの往復系部品がもつ伸縮モードの共振周波数とノック音の強度ピークが一致することが分かっており,ナチュラル・サウンド・スムーザーによる対策はこの共振周波数をねらったダンピングによるノック音レベルの低減であった。新型エンジンで行った対策は,音レベルを低減するのではなく,車内音として聞こえづらい周波数へと共振周波数をずらすことをねらいとしている(Fig. 15)。Fig. 15 Knocking Noise Reduction 往復系の共振はコンロッドをばね要素と見立てた単振動系と見なすことができる。このときばね定数はコンロッドの剛性により決定されるため,コンロッドI幹部の断面積を変化させることで共振周波数f0を任意に調整することができる。一般に車内の暗騒音は低周波側で大きくなるため,I幹部の断面積を縮小しノック音の周波数を低周波側にシフトすることで,車内音の目標を達成した。これにより,往復系部品の重量とコストの増加を抑制しながらノック音を低減することができた。3.3 クランクシステムの開発 直列6気筒エンジンとして高い静粛性の実現と衝突要件を含めたパッケージの成立が必要であり,これらの課題を高次元で達成するためモデルを活用したクランクシステム全体での最適化を行った。(1)クランクシステムの開発構想 直列6気筒化によるクランクシャフト全長拡大によりクランクシャフト自体のねじり共振周波数は低下するため(Fig. 16),エンジンの常用回転領域内でねじり共振が励起される頻度は大幅に増加する。

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