マツダ技報 2022 No.39
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―37―1. はじめにEngineEngine TypeDisplacementEGR systemEngineMax Torque/rpm550Nm/1500-2400rpmMax. Power/rpmMax Torque/rpmMax. Power/rpmMotorLithium-ionVoltageBatteryEnergy densitye-SKYACTIV DSKYACTIVDFuelConsumptione-SKYACTIV D 3.3In-Line 6w/MildHybrid3283cm3HP & LPEGR187kw/3750rpm12.4kw/900rpm153Nm/200rpm44.4V0.33kWh21.1km/L18.5km/L2.1 M Hybrid Boostのシステム構成 新世代3.3Lディーゼルエンジンは広い負荷領域で燃費が良いため,容量の小さい電気デバイスでも合理的なシステムが構築可能である。そこで小型のモーターを備えた48Vマイルドハイブリッドを選択し,低抵抗の8速オートマチックトランスミッション(3)を組み合わせている。具体的な構成をFig. 2に示す。極軽負荷領域でのモーター駆動と回生エネルギーを最大化するために,エンジン切り離し機構を備えた挟み込みタイプのモーターを新規に開発した。モーターは集中巻きタイプで新型トランスミッション内に配置し,ローター内側にエンジン切り離し用の湿式多板クラッチを搭載して全長をコンパクト化している。また電圧を48Vに抑えることで小型/軽量化を実現すると同時に,➀大電流化,➁送電ロス低減,➂各コンポーネントの性能を限界まで引き出すことで出力目標を実現した。インバーターはモーター直上に搭載し,結線距離/端子数の最小化で送電ロスを抑えるとともに,ペダルワークスペース確保に貢献している。またパワーモジュールの寿命予測解析を行い,最大電流を極限まで高めることで短時間定格トルクUPを実現した。バッテリーはリチウムイオンの12セル直列でDC60V以下として,車室外後席床下に搭載することで居住性/荷室スペースを確保した。48Vでの出力性能/頻度を満足するために,冷却は冷媒方式を採用した。また,バッテリーの充放電性能の検証により,最大電流と実効電流値を極限まで高めている。2.2 協調制御のねらいと効果 効率のよいSKYACTIVDの特性を最大限に活かし,モーター容量の小さい電駆システムでありながらもストロングハイブリッド並みの燃費性能実現をねらった。減速時にはエンジン切り離しを行うことで回生エネルギーを最大化し,駆動時は効率上最適なエンジンとモーターのトルク配分となるようエネルギーマネージメントを行っている。また多段化されたトランスミッションのシフトパターンを低回転側に最適化することで,Fig. 3に示すように,エンジン効率の良い領域を最大限使えるようにした。特に極軽負荷領域でのエンジン切り離し走行を最大化するために,後述するSequential Valve TimingFig. 1 Development and Technology ConceptTable 1 SKYACTIVD and M Hybrid Boost SpecificationsFig. 2 System Configuration Diagram マツダは,基本となる内燃機関の効率改善を主体に,適材適所に電動化技術を組み合わせていくマルチソリューションによるCO2削減に取り組んでいる。新開発のSKYACTIVD 3.3は,実用域で世界トップの燃費率と,どこまでもアクセルに追従する力強いトルクを達成した。M Hybrid Boostは,この高効率なエンジンに48Vハイブリットシステムのモーターと多段化されたトランスミッションを組み合わせている。これらを効果的に協調させることにより,ストロングエンジンのメリットを最大限に活かし,優れた走行性能と環境性能を更に向上させ,高い次元で両立させることをねらいとして開発し,アクセルに即応する意のままの走りの進化とストロングハイブリッド車両並みの低燃費を実現した。 本稿では,SKYACTIVD 3.3をより際立たたせるマイルドハイブリッドシステムとの独自の協調制御技術について紹介する。2. ストロングエンジン+MHEV開発のねらい 高効率なストロングエンジンと小型モーター,及びトランスミッションの組み合わせで,効果的に環境性能と走行性能を向上させることをねらって開発を行った。この提供価値向上をねらった技術コンセプトをFig. 1に,主要諸元をTable 1に示す。これらの提供価値と具体的技術について以降に説明していく。

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