マツダ技報 2022 No.39
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(2)DPF再生との協調制御 DPF再生制御は,堆積した煤(スス)を燃焼させるための燃料が必要であり,通常時に比べ燃費悪化を伴う。 煤の燃焼温度帯に急速昇温し,その温度帯を安定維持することが再生時間の短縮につながり,燃費悪化の抑制につながる。 しかし,実際の走行シーンでは排気温度が下がる燃料カットを伴う減速シーンが多く,昇温や温度維持にロスが生じている。 今回,条件を満たす減速シーンでは燃料カットは行わず,微小な燃焼トルクを発生させつつも, その燃焼トルクをモーター発電抵抗で相殺させることで,必要な減速度は確保しつつ,排気温度を確保することで,昇温早期化及び,温度の安定維持を実現さ―40―Fig. 10 E■ect of Boost Delay on ISFCFig. 11 Suppressing the Deterioration of Lamda at Transient Operating ConditionFig. 12 Enhancing DPF Regeneration Speed and 4.2 走り改善と過給応答アシスト 高応答モーターの特性を活かし,操作した瞬間から遅れなく先が予見できる初期応答と,操作に対する滑らかさ,及びコントロール幅の広さを深化させ,人間中心の走りを極めることをコンセプトに開発をおこなった。SKYACTIVDでは,大排気量化とVGターボチャージャー+HP/LPEGRの吸排気システムを採用しているが,これに合わせて空気系,噴射系,及びモーターの制御配分を見直し,従来制御からの刷新を図っている。 具体的には,要求加速度から定めた目標トルクに対して,まずは時定数の最も大きい空気系を主体にエンジントルクをコントロールし,過渡的に過給応答が不足する領域をモーターでアシストさせる制御構造とした。従来HPEGRシステムに採用してきた踏み込みに応じて瞬時に適切なEGRバルブ開度へ動かすモデルベース制御をLPEGRバルブにも適用拡大し,LPEGRシステムの課題である応答性を改善した(Fig. 13)。 またターボ制御についてもアクセル操作に応じて適切にベーンをコントロールし,定常走行時のポンプロス低減と加速時に必要な過給圧応答を確保し,燃費と応答性の両立を図っている。前述のEGR制御との協調を効果的に使い,大排気量エンジンと組み合わせることでエンジン単体でもドライバーの意図に即応する過渡トルクを実Temperature Stabilityの介入量をリニアに制御し,強い踏み込み時はエンジントルクを最大限発揮させ,後述の過給応答アシストへシームレスに切り替え,走り性能と燃費改善を両立した。せた。 これらにより,SKYACTIVD 2.2で進化させてきたDPF再生効率を更に高め,CX60の優れた実用燃費性能の向上に貢献した(Fig. 12)。

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