マツダ技報 2022 No.39
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(2)有車速時再始動制御 限られたモーター出力であるため,走行エネルギーの一部を始動トルクとして使用することで,前述のエンジン始動トルク低減と合わせ,必要最小限の起動トルクで再始動させるとともに,エンジン,モーター及びクラッチとの協調制御によりショックと応答を両立した再始動―41―Fig. 13 HP/LP EGR Control Improvement at Transient Condition (vs 1.8L DE)Fig. 14 Acceleration Performance Improvement with M Hybrid Boost Assist Technology (vs 2.2L DE)Fig. 15 Comparison of Re-Start Response from Idle Stop現させているが,M Hybrid Boostでは,更に一段高い加速度目標を設定し,モーターでアシストさせることによって,Fig. 14に示すとおり,より次元の高い駆動力特性を実現させている。(新型CX60にはマツダDE初のスポーツモードを搭載しており,当モード選択時は目標加速度とともに,更に応答性に振った適合にしている。) なお,エネルギーマネージメントからも,必要最小限の加速アシストとし,エンジンポテンシャル以上のアシストはさせていない。またこれらトルクマネージメントをアクセル操作だけではなく,発進時や変速時のトランスミッションとのトルク協調シーンにも適用することで,さまざまなシーンにおいても高い応答性と連続的な駆動力特性を実現し,途切れることのない加速性能を実現した。4.3 再始動制御(1)停車時再始動制御 モーターアシストと燃焼制御をドライバー操作に応じて協調させることで,迅速かつ低振動な再始動を可能にした。再始動時の振動は,エンジンの燃焼トルクによりPTの剛体共振が励起されることが主因であるが,特にディーゼルエンジンにおいては,ガソリンエンジン比イナーシャも大きく,燃焼トルクも大きいことから,この共振滞在回避が課題であった。M Hybrid Boostでは,SVTをリタード状態で始動させ,圧縮トルク変動を低減しつつ,モーターにより共振領域以上にエンジン回転を上昇させてから着火させることで,大幅な振動抑制を達成した。またより発進応答性が求められるアクセルを踏みながら再始動させるシーンにおいても,必要最低限の燃焼トルクを与え,共振滞在を最小限に抑えつつ,クラッチ制御とも協調させることで,従来のスターター方式によるエンジン再始動に比べ大幅な応答性改善を実現すると同時に,振動のないスムースな発進応答性を実現した(Fig. 15)。一方,エンジン停止時やアイドルストップ時にも圧縮トルク変動を入力としたPT剛体共振による振動が発生するが,SVTとスロットル制御を組み合わせることでトルク変動を低減し,大幅な振動低減を実現した。

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