マツダ技報 2022 No.39
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 2.1 システム構成 一般的にプラグインハイブリッドシステムの方式は,パラレル,シリーズ,シリーズ・パラレルの3つの方式が主流である。e-SKYACTIV PHEVは,内燃機関+モーターでの長距離巡航や加速のつながりと最高速度に優位性があるパラレル方式を採用した。Fig. 1にe-SKYACTIV PHEVシステムの構成を示す。2.5Lガソリンエンジンと新開発の8速ATの間に新開発のモーターを搭載した。モーターのローター内側には,エンジンとモーター切り離し用の湿式多板クラッチを搭載し,EV走行と減速回生時はエンジンを切り離すことで,EV航続距離を高めている(Fig. 2)。高電圧リチウムイオンバッテリーは,FRの構造(車体中央にプロペラシャフトが通る)に合わせて後席床下に左右2分割搭載することで17.8kWhの容量を確保した。2.5Lガソリンエンジンとモーターを合わせたシステム最大出力は241KW,最大トルクは500Nmを実現した。EV航続距離は,75kmを実現した。充給電装置は2相7.2kWのAC充電+CHAdeMO(日本仕様のみ)を後部に配置し,V2L/V2Hに対応している。(2)EV走行からのエンジン始動 EV走行からガソリンエンジンを使った走行に切り替える際のエンジン始動は,i-stopで開発したスターター始動とモーターでのクラッチ始動の2つの方式を導入した。スターター始動システムは,12V鉛蓄電池からスターターに電力供給を行う。始動中の電装品の12V電源電圧保証は,サブバッテリーとスターター切離しリレーで行う(Fig. 4)。スターター始動の実施は,EV走行中に最大出力での走行へ切替える要求が入った場合や高電圧リチウムイオンバッテリーの充電量低下時に行う。これにより,高電圧リチウムイオンバッテリーのエネルギーを始動用に保持しておく必要がないため,EV走行時の航続距離及び最大出力性能を高めることができた。クラッチ始動システムは,Fig. 4に示すクラッチ1でモータートルクをエンジンに伝達して始動する。また,クラッチ2を滑らせることで始動中のトルク変動が車両へ伝達するのを防いでいる。クラッチ始動は,主にHEV走行や低出力EV走行から最大出力切り替え時に行う。作動頻度はこち―52―2. システムの特徴Fig. 2 Location of Engine Disconnecting Clutch2.2 システム動作(1)内燃機関とモーターの動作 e-SKYACTIV PHEVの基本動作として,走り始めはガソリンエンジンを切り離して外部充電で蓄えたバッテリーのエネルギーでモーターによるEV走行を行い,バッテリーのエネルギーがなくなった後はガソリンエンジンを始動してHEV走行を行う。また,EV走行中でもドライバーの要求加速度が大きければガソリンエンジンを始動し,ガソリンエンジンとモーターの出力を合わせて加速を行う(Fig. 3)。Fig. 3 Action of ICE and Electric MotorFig. 1 Location of Main Components化技術と組み合わせて導入することで高性能なシステムを効率的に開発した。e-SKYACTIV PHEVで目指した主な目標は以下である。・2.5Lガソリンエンジン+8速ATにモーターを組み合わせた滑らかかつ力強い加速性能・デイリーユースに対応するEV航続距離・実用性のある充電時間性能・V2H/V2Lへの対応・CX60の室内/荷室空間の確保 次章より,e-SKYACTIV PHEVで開発した主要技術の詳細を紹介する。

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