マツダ技報 2022 No.39
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―53―Max torqueMax PowerStator diameterCore active lengthCooling2.4 高電圧リチウムイオンバッテリー(1)高電圧リチウムイオンバッテリー概要 CX60 PHEVでは,高容量リチウムイオンバッテリーセルを 96個直列接続し,総容量17.8kWhを有した高電圧バッテリーパックとして構成している。この高電圧バッテリーパックは,後席床下に搭載し,車両の低重心化と低慣性モーメント化により,マツダらしい人馬一体の運動性能に貢献している。(2)高電圧リチウムイオンバッテリー筐体 CX60 PHEVの高電圧リチウムイオンバッテリーは,限られた車両空間に最大限のバッテリーを搭載するため,一般的に採用例の多い鋼板製ではなく,構造自由度が高いアルミダイキャスト製のバッテリー筐体を採用している。鋼板製のバッテリー筐体と比較して,固定構造部材の筐体活用や必要強度に応じて部分的に板厚を変更した一体成型を採用し,部品点数の90%を削減した。 これまで,床下全面に搭載したバッテリーは衝突時の荷重影響を大きく受けるため,鋼板製に比べて低靭性であるアルミダイキャスト筐体は,不向きとされていた。そこで,モデルベースによるアルミダイキャストの破断予測手法(Fig. 6)を確立し,一体成型による適切な板厚配分と材料選定を行うことで,アルミダイキャスト筐体の採用を実現した。採用したアルミダイキャスト材は,腐食成分が少ないため,床下被水による腐食耐性を大幅向上させている。また,バッテリーパックを車両に搭載する取付け部品に,エネルギー吸収機能をもつ押出アルミや,高張力鋼板を採用することで,衝突時にバッテリー筐体への入力を低減し,全体で最適化設計して,鋼板製バッテリー筐体に対して,質量 37kgの軽量化を実現した(Fig. 7)。Fig. 6 Fracture Prediction for Aluminum DiecastM Hybrid Boost153Nm12kW266mm42.5mmWater jacketFig. 4 Two Restart System2.3 モーター CX60のモーター設計では,M Hybrid Boost(直6内燃機関+8速ATに搭載した48Vマイルドハイブリッドシステム)とe-SKYACTIV PHEVに適した薄型のモーターが求められた。そこで,薄型モーターに適した集中巻タイプのモーターを開発し,新開発の8速ATに搭載した(Fig. 5)。モーターの外径/幅をAT本体と一体で設計することで,油路や冷却水路及び,ボルト固定点が最適化できたためモーター外周径の小型化が可能となり,ドライバーのペダルワークスペース確保に貢献した。インバーターは床下配置として,モーター下部にコネクターを配置することで線間距離を短縮して送電ロスを極力抑えている。これらと合わせ,最大出力129kW/最大トルク270Nmを達成した。Fig. 5 Electric MotorTable 1 Adaptation of Electric Motore-SKYACTIVE PHEV270Nm129kW266mm90mmWater jacketらがメインとなるよう設計しており,スターター始動システムの負担を抑えている。 また,M Hybrid Boostとe-SKYACTIV PHEV用のモーターを効率的に設計するためにステーター断面を共通化して外径を固定し,要求出力/トルクに応じて軸長を変動させる仕様とした(Table 1)。

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