マツダ技報 2022 No.39
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(3)バッテリークーリング CX60 PHEVでは,バッテリーの温度を良好な入出力電力を発揮できる範囲に保つべく,室内空調システムと協調した,冷媒を用いるバッテリークーリングシステムを採用した。CX60のFR駆動方式に合わせて,バッテリーパックは,プロペラシャフトで左右2分割する構造とした。左右のバッテリーパック間を接続するクーリングパイプは,排気管による高温エリアに配置されるため,バッテリークーリング用の冷媒が吸熱気化して左右バッテリーパック間で冷却能力に差が生まれないようにする必要がある。また,冷媒がコンプレッサーに液戻りしないよう熱交換器で完全に気化させることと,下流側のバッテリーモジュールまで均一に冷却することの両立が必要となる。 この課題を解決するために,CX60では,MX30で採用した電気式膨張弁に変えて,小型・シンプルな機械式の膨張弁を,左右のバッテリーパックそれぞれに搭載した。一方で機械式膨張弁は,電気式膨張弁と比較して,冷媒の流量を細かく制御できないため,バッテリーモジュールごとに2本の熱交換器を設定し,上流側と下流側の熱交換器を同じバッテリーモジュール下面にレイアウトするカウンターフロー方式を採用することで(Fig. 8),冷却能力の向上及び均一化を実現した。―54―3. e-SKYACTIV PHEVの特徴2.5 充給電装置(1)充電 CX60 PHEVでは,充電時間の短縮及び小型軽量化を目的として新開発の充電器を採用した。PHEV車両の普通充電に求められる市場のニーズを「欧州のデイリーユースにおける平均移動距離の80%がEV走行可能であること」と「電欠状態から就寝中または就業中に満充電になること」と定義した。上記より充電性能目標を「1時間の充電で20km走行可能なこと」と「4時間で満充電になること」と定め,2相7.2kW充電器を採用した。CX60 PHEVでは2相対応したことにより, 3相11kW設備を使用した際の充電時間は,0%~満充電までを2時間20分,20~80%を1時間30分とした。また,充電器本体の小型化を行い,配置場所を従来(MX30)のトランク下からトランクのサイドトリム内に変更したことで荷室容量確保に貢献した。(2)給電 多様化するお客様のニーズに応えるため,CX60 PHEVでは1500Wの給電器をオプションで設定した。更に,災害の多い日本での緊急時の利便性を考慮し,CHAdeMO方式の急速充電を搭載してV2Hに対応させている。3.1 ドライビングパフォーマンス プレミアム車を操るドライバーの「大きな力を解き放ちたい」という期待に対し,同期が感じられるようにドライバーの操作に対するクルマのフィードバックの領域を拡大し,心の活性化を“昂る”レベルまで高めることを目指し以下の2点に注力した。 (1)大トルク/高出力 (2)緻密な駆動力制御(1)大トルク/高出力 2.5Lガソリンエンジンと最大出力129kW/最大トルク270Nmのモーターの組み合わせで3.3L/6気筒ディーゼルエンジンを凌駕する駆動力を実現している。これにより,CX60のラインナップでトップレベルの性能を実現した(Fig. 9)。Fig. 7 Battery PackFig. 8 Refrigerant Passage in Cooling PlateFig. 9 UNIT TORQUE

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