マツダ技報 2022 No.39
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久米 章友 楠 友邦 中上 信宏 (1) 本橋ほか:サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030,マツダ技報,No.35,pp.3-8(2018)(2) 吉田ほか:新型デミオ向けバッテリマネジメントシステムの紹介,マツダ技報,No.29,pp.14-19(2011)■著 者■ 宮本 圭一 e-SKYACTIV PHEVは,走る歓びと優れた環境性能において,CX60のコンセプトであるドライビングエンターテインメントSUVにふさわしい性能を実現できた。マツダは2050年でのカーボンニュートラル化に向けて,ク―56―4. おわりに3.3 HEV走行開始時の排気ガスのクリーン化 日常でのEV走行中にバッテリーの電力が減少し,HEV走行に切り替える際,エンジン始動から排ガスを浄化するための触媒が活性するまでの間,エンジンとモーターを協調させることで安定したクリーンな排ガス性能を実現した。新規開発要素としては,触媒暖機中のエンジン出力Up,走り/NVH(振動)との整合,燃焼切り替え(状態遷移)の対応である。 触媒暖機中のエンジン出力Upは吸入空気量が増え,排気ガスの絶対量も増えることから,規制成分である全炭化水素(THC)低減と背反してしまう。このブレイクスルーは従来の均質燃焼から成層燃焼に切り替えることで達成し,成層燃焼をベースから見直すことで,Fig. 14のようにエンジン出力として最大150NmまではTHCを従来比半減させることができた。Fig. 14 Reduction of THC参考文献福岡 泰明 後藤 剛志 春貝地 慎太朗  更にTHCの排出量を低減した状態で安定させるために,エンジンは一定トルクをキープすることを基本とし,ドライバーが要求する出力を満足するためにモーターで過不足分を補い,協調させることで,排ガス性能と走りとNVH(振動)の各背反性能に対して,高い次元での成立解を見出した。3.4 HEV走行でのCO2改善 CX60は高出力モーターと大容量バッテリーを利用して,減速時には大きなエネルギーを蓄えることができるため,摩擦ブレーキと回生ブレーキを積極的に協調させることで回生率を向上させた。低速時のエンジンの燃費率が悪い領域では,バッテリーに蓄えたエネルギーでEV走行し,中高速時のエンジンの燃費率の良い領域では発電やモーターアシストを利用しエンジンがより効率の良い領域で動作するように制御した。これらの効果でHEV走行時のCO2を改善した。ルマのライフサイクルでのCO2排出削減に取り組んでおり,今後も,マツダらしい電動化技術の進化に挑戦していく。幸野 徹也岡崎 真行横手 達徳

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