マツダ技報 2022 No.39
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―58―2.2 理想のAT機能の追求 ATの提供価値を定義し,従来のトルコン付きステップATの弱点を解消しつつ,熟練ドライバーによるマニュアル車操作のようなスムーズな発進/変速操作を緻密なクラッチ制御で作り込み理想のATを実現した(Fig. 3)。Fig. 3 The Value Provided by AT and the Ideal AT 2.3 電動化対応 環境性能や走行性能に対する幅広いニーズにお応えするためには電動化技術の対応は不可欠である。新型8ATではモーターをエンジンとトランスミッションで挟み込む構造を採用し,48Vマイルドハイブリッド及びプラグインハイブリッドの2種類の電駆システムに適応した(Fig. 4)。 エンジンとモーター/ジェネレーターを切り離して効果的にエネルギーを回生し,加速時や変速時に有効活用することで,環境性能だけでなく素早い加速応答や変速性能にも貢献している。Fig. 4 Electric Transmission Layout of New AT2. 開発のねらい1. はじめに3. 技術コンセプトFig. 1 Phantom View of 8ATFig. 2 Pedal Workspace ComparisonImage 新世代ラージ商品群第一弾として発表したCX60は,マツダらしい意のままに操れる走行性能と高い環境性能を両立させ,どんな道でも運転を楽しむことができるミッドサイズSUVとして開発された。その究極の人馬一体感を実現するために,新たに縦置きの8速ATを開発した(Fig. 1)。この新型8ATは,トルコンレスのクラッチ発進機構によるダイレクトな発進と,多段化による滑らかで応答の良い変速を実現するとともに,抵抗低減による高効率化により走りと環境性能を高い次元で両立した。 縦置きの新型8ATは人間中心の設計思想を追求し,以下を開発のねらいとした。2.1 理想の着座姿勢の実現 人馬一体の走りを支える理想的な着座姿勢を実現するためには,ペダルワークスペースの確保が不可欠である。縦置きのAWDドライブトレインにおいては,前輪に駆動力を伝達するプロペラシャフトの配置が,センタートンネルの車室内への張り出し,及び,ペダルワークスペースに影響を与える。従い,プロペラシャフトに隣接するATの小径化が課題となる。課題解決の施策として,①ATユニット内部構造の最適化でケーシング側面に窪みを設け,②2軸小径のトランスファーギヤを採用しプロペラシャフトをケーシングの窪みにぴたりと沿わせることでセンタートンネル部の小径化を図った。これらを開発初期から考慮に入れて車両全体での最適化設計を行い,理想のペダルワークスペースを実現した(Fig. 2)。 新型8ATを開発するに当たり,トランスミッションの基本機能は駆動力を「素早く」「滑らかに」「無駄なく」路面に伝えることであると定義し,それらを軽量・コンパクトに実現することを目指した。この実現のために基

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