マツダ技報 2022 No.39
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―60―7. 電駆対応8. 損失低減Fig. 8 Ideal Gear RatioFig. 9 48V Mild Hybrid LayoutFig. 10 Plugin Hybrid Layoutン性能目標から,レシオレンジの設定を行った。具体的には,1速の性能要件としてローンチ加速性能,登坂/トーイング性能を,8速に対しては余裕加速度,高速巡行燃費を考慮した。結果,従来6ATのおよそ1.4倍のレシオレンジとすることで複数ある駆動ユニット全ての走行性能を実現することができた。6.2 中間段位の要求性能と多段化 各段位に求められる走行性能と,隣り合うギヤ段の比率(ギヤステップ)によるつながりに加え,全体のギヤ比のつながりによる変速のリズムの要件を定義し,中間段位のギヤ比,必要なギヤ段数を明確にした。具体的には各々の変速での駆動力のつながりに加え,低段位の加速ギヤ段においては収束性を,中間ギヤ段以上の定常ギヤ段においてはドライバーの意図に応じた加速度を的確に実現できるギヤステップを明確にした。本要件と6.1項の要求レシオレンジを両立できるトルコンレスATとして前進8速,後退1速の8ATを選定することで理想を実現した(Fig. 8)。 新型8ATは環境性能に対応するために初期構想から電動化対応することを想定し,モーターを内蔵可能なトランスミッション構造を採用した。モーターをエンジンとトランスミッションで挟み込む構造とすることで,48Vマイルドハイブリッドやプラグインハイブリッドに対応できる拡張性の高いシステムを採用しさまざまな環境ニーズに応えることを可能とした。 新世代ラージ商品群で電駆システム採用にあたり目指したのは,動力源がエンジンとモーターの2つがあることをドライバーに意識させることなく圧倒的な走りと燃費を実現することである。エンジンとモーターを切り離すクラッチを緻密にコントロールすることで,回生したエネルギーを加速時や変速時に有効活用し,環境性能だけでなく素早い加速応答や変速性能を実現した。 マイルドハイブリッド,プラグインハイプリッドのそれぞれのシステムに対して効率的でベストなソリューションを提供するために以下システムを採用した。 ・48Vマイルドハイブリッド:大排気量の6気筒エンジンとの組合せで,小排気量に比べて燃費性能の劣る極軽負荷領域を小型のモーターで効果的に補い,環境性能を高める(Fig. 9)。 ・プラグインハイブリッド:中負荷まで高出力のモーターが担い,中高負荷燃費が良いSKYACTIVGとの組み合わせで環境性能と走りを高次元で両立させる(Fig. 10)。 新型8ATはスリップロスの少ない発進システムや走行中のクラッチ引きずりを抑制可能なスケルトンを採用したことで,基本構造レベルで損失を大幅低減している。オイルポンプは,高油圧が必要なクラッチ作動圧要件と大流量が必要な潤滑・変速要件をあらゆる走行状況で無駄なく満足できるように,機械式ポンプと電動ポンプに機能を最適配分し,無駄な吐出をさせない油圧供給システムとした。更に,オイルの低粘度化と潤滑システムへの可変機構追加によって,回転体の攪拌ロスを低減した。これらによって,従来ユニット比でトルクキャパシティを向上しつつ,約22%の損失低減を実現した(Fig. 11)。

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