マツダ技報 2022 No.39
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―62―*3  操安性能開発部 CX60. This AWD realizes high traction and ideal handling performance, becoming one of the best passenger cars.It provides safe and secure driving perofrmance on any roads, increases “driving pleasure” thanks to the natural vehicle behavior that is maneuverable even in high speed and high-G range.The article introduces the technical details of the AWD system.Vibration, noise, and ride comfort, Full-vehicle simulationElectronic Platform Development Dept.Drivetrain Development Dept.Taku YoshidaSeiji HidakaChassis Dynamics Development Dept.Yasumasa ImamuraKatsutoshi ShimadaDaisuke Umetsu1. はじめにKey words:Power transmission, All-wheel drive system, Drivetrain, Vehicle dynamics, Driving stability, Development of AWD System Technology for CX60CX60のAWDシステム開発も,これまでの前輪駆動ベースのi-ACTIV AWDを大きく凌駕するレベルに進化し,乗用車において世界トップクラスのトラクション性能を誇るAWDとして,パワートレインの出力を余すことなく路面に伝達する。 また,ハイブリッドシステムにおいては,減速時に4輪のタイヤからより多くのエネルギー回収ができるよう, パワートレインやブレーキシステムとAWDの統合制御によって,さまざまな走行環境に対して4輪の駆動力配分を最適化することで,幅広い運転シーンにおいて,お客様に安心いただける走りの力強さと低燃費による高い経済性を提供する。加えて,4気筒及び6気筒縦置きエンジンや床面バッテリー配置等への対応から,軽量・コンパクトかつ高い伝達効率を目指して開発した。特集:MAZDA CX6010 縦置きエンジン4WDの歴史は古く,4輪直結駆動のパートタイム式に始まり,前後トルク配分が常時固定配分となるセンターデフ式へと進化し,その後電子制御多板クラッチ式を採用する事例が増えるにつれて,前後トルク配分の最適化を模索する時代へと変化してきた。 CX60より採用した縦置きエンジンレイアウトのAWDシステムは,後輪駆動ベースの駆動方式の特徴であるニュートラルな旋回性はそのままに,AWDならではの安定性をバランスさせ,より高次元な人馬一体感を提供するフルタイム4WDである。 雪上など低 μ路での力強いトラクションによる安定した走りはもちろん,高速道路での直進安定性やワインディングにおける意のままのハンドリング性能について*1,2  電子基盤開発部 *4,5  ドライブトレイン開発部 要 約 CX60でマツダ初となる縦置きエンジンレイアウトの電子制御多板クラッチ式AWDを採用した。高いトラクション性能と理想的なハンドリング特性を実現し,乗用車としてトップレベルのAWDを新開発した。 さまざまな路面で頼れる安心・安全の走破性に加え,ドライバーが高速・高Gの領域に至るまで意のままに操れる自然な車両挙動によって,より高いレベルの�走る歓び”を提供できた。 本稿では,それらを実現したAWDシステムの技術紹介を行う。AbstractMazda’s first electronic controlled multi-plate clutch AWD for a longitudinal engine layout is adopted to the 吉田 琢*1日高 誠二*4今村 泰理*2梅津 大輔*3嶋田 克利*5

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