マツダ技報 2022 No.39
73/275

(2)歯面平滑化技術による損失低減効果について 歯面平滑化技術によって,高トルク時のデフユニットのギヤの摩擦損失を約35%低減し,車両燃費及びCO2排出量低減に貢献した(Fig. 8)。―64―ecnamrofrep gnnruTi2.2 高効率化 初代CX5以降,マツダではAWD車の実用燃費向上を目的に,AWDユニットの抵抗低減に継続的に取り組んでいる。 CX60では高トルク対応AWDとして,CX5,CX30に織り込んできた回転抵抗低減技術に加え,新たに高トルク時のギヤ摩擦損失低減を目的とした,ハイポイドギヤの歯面平滑化技術を開発した。(1)歯面平滑化技術について 一般的にハイポイドギヤは,コンパウンド材を歯面に塗布しながらギヤ対を噛み合わせること(ラップ工程)で,ねらいの相対歯形を実現している。その結果,歯面には噛み合い進行方向に筋目が付いており,歯面の油膜形成が阻害され,高トルク時のギヤの摩擦損失が増大する。本技術は,ラップ工程で発生する筋目を除去し,歯面をディンプル化(多数の小さなくぼみを形成)することで,油膜形成性を向上させ,高トルク時のギヤの摩擦損失低減を狙ったものである(Fig. 7)。Fig. 7 Comparison of Tooth SurfaceFig. 8 Resistance Reduction E■ect3.2 後輪駆動ベースAWD技術コンセプト 縦置きエンジンレイアウトの後輪駆動ベースAWDの特徴として,リヤトルク配分するほど旋回ポテンシャルが上がる前輪駆動ベースのAWDと違い,フロントトル3. AWDシステムの機能3.1 より高次元な人馬一体を目指して CX60では,後輪駆動ベースの駆動方式がもつハンドリングの良さをそのままに,電子制御多板クラッチ式AWDの採用によって安定走行領域を広げることでより高次元な人馬一体感を提供することを目指し,以下のポイントに注力した(Fig. 9)。① AWDならではの安定性(低μ路や高速直進安定性の領域拡張)② ニュートラルステア特性を維持できる領域の拡大(高速・高Gの安心性能の拡張)③ 雪上やオフロードでの高い走破性(走行フィールド拡張)④ 2WDに迫る実用燃費(行動範囲の拡張)RWDFixed ratioCX-60AWDFig. 9 Extended ImageFig. 10 Concept of AWDTowingOn roadSnow/iceStabilityBreakthrough turning/ stability performance due to AWD controlOff road 加えて,従来RWDと4WDが旋回性と安定性のトレードオフとなるという常識をAWDのトルク配分の最適化によって覆し,旋回性と安定性の両立をブレイクスルーする(Fig. 10)ことでダイナミクス全体を進化させた。乗用車において世界トップクラスのトラクション性能を誇るAWDとして,パワートレインの出力を余すことなく路面に伝達するシステムを開発し,従来の前輪駆動ベースのi-ACTIV AWDを大きく凌駕するレベルに進化させた。

元のページ  ../index.html#73

このブックを見る