マツダ技報 2022 No.39
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―70―2.2 路面外乱や操作変化に対してシンクロが持続 素早くシンクロさせた後,これを持続させることが「脳と直結したような感覚」の実現には必要である。そのために,路面外乱に対して,バネ上を素直にバウンスさせながらも,不必要なピッチングを抑えることでシンクロが持続できることに着目した。従来,路面外乱に対しては,前後各輪それぞれで力を滑らかにバネ上に伝える技術を採用した。今回は,加えて前後輪の入力の向きを揃えることで,操舵に対するシンクロを,維持させた。この技術の一例を次項3.3で紹介する。2.3 クルマの反応を,五感で正確に感じ取れる 脳に組み込まれた身体図式は,五感を通じて得られる情報によって常に更新され続けている。つまり,いかなるシーンでも,クルマ動き(情報)を人に正確に伝える必要がある。情報は,さまざまな部品を介して人に伝えているが,最終的にシートを介して伝わっている。CX60では,これまで以上に,人に正確な情報伝達が可能なシートを開発したので,その一例を次項3.4で紹介する。3.1 人の操作を正確にフロントタイヤの横力に変え まず着目したのは,フロントの転舵軸の最適化である。従来は,ハンドルを切った際にタイヤが元に位置に戻る復元力を得やすく,高速走行での安定性を向上させるために,転舵軸の傾きを大きくする必要があった。しかし,その反面大きくすると,力の伝達順にかかわらず操舵と同時にヨー,ロール挙動を発生させていた(Fig. 5 赤矢印の部分)。Fig. 5 Mechanism of Caster ActionFig. 7 Steering Angle vs. Lateral Displacement3.2 リアサスペンションによる応答を高める技術 応答性を高めるには,サスペンションの剛性を高めることが必要であるが,一方でしなやかな乗り心地とNVH性能のためには,一定以上のコンプライアンスが必要である。この背反をブレークスルーするために,下図(Fig. 8)に示すとおり,サスリンクに支持剛性機能を集約し,サスクロスマウントに振動抑制の機能を集約した新しい剛性配分の最適化技術を紹介する。3. 導入技術Fig. 6 Steering Angle vs. Roll AngleFig. 8 New Function Sharingる技術 そのため,従来車では操作初期において応答が高くなる傾向にあった。今回は,転舵軸の傾きによるばね上の動きを最小化するために,復元力による高速での安定性は,リアサスペンションの特性を最適化し補うことでバネ上の動きを従来比較で大幅に低減した。図(Fig. 6,7)は,その結果を示す。

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