マツダ技報 2022 No.39
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(1)トラス配置のマルチリンクサスペンション 今回は,新設計のマルチリンクサスペンションを採用した。 特に注力したのは,リンク配置である。図(Fig. 9)に示すように上下に配置する4本のリンクを相似形でかつ,トラス(三角形)配置とすることで,幾何学的剛性を高めた。加えて,タイヤ側にはボールジョイントを採用し,ボディー側のブッシュにおいても剛性を高めつつ,スムーズなストロークを実現した。これによりタイヤの支持剛性を高めた。(2)サスクロスマウントでの乗り心地及びNVHとの両 サスクロスマウントは,ゴムボリュームも大きく,リンクブッシュに比べ振動抑制の機能効率が高い。下図(Fig. 10)は,乗り心地に必要な理想コンプライアンスを維持しながらも3D指標でのタイヤ位置決め剛性実現した結果を示す。―71―3.4 シート剛性機能配分の最適化(1)力の伝達をストレート化 路面からの正確な情報伝達とは,力の変化を人へリニアに伝達することである。その力の伝達に大きく関わっているシート骨格は,図(Fig. 13)に示すように大きく3つの領域で構成されている。シート骨格を構成する部品は,車体へ取り付け部も兼ねている「スライダー」とシート基本骨格である「フレーム」,そして「スライダー」と「フレーム」を繋ぐ「ブラケット」となっている。Fig. 9 Truss Layout Rr. SuspensionFig. 10 Tire 3D Rigidity vs. 2D Rigidity3.3 前後サスペンション作動軸の最適化 前後輪の入力の向きを揃えるために注力したのは,サスペンションの作動軸である。サスペンションには,さまざまな機能が求められており,その機能を満たすために全体バランスを考慮しながらアームやリンクの配置なFig. 11 New Suspension Stroke AxesFig. 12 Driver’s Head Pitch Angle立どを決定してきた。しかし,前後のサスペンションの作動軸を揃えることは難しく,一つのスロープを乗り越えるシーンで見れば,ピッチ挙動を誘発し,人のバランス保持を阻害する要因が残っていた。この作動軸の前後差を極限まで抑えることに挑戦した。その結果,フロントはダブルウィッシュボーン式,リアはマルチリンク式を採用し,前後輪のタイヤの上下軌跡の回転中心を結んだピッチングセンターを,車両の後方に配置させることで作動軸を一致させた。下図(Fig. 11)は,その状態を示す。 下図(Fig. 12)は,バネ上がバウンス基調となる動きを実現したことで人がバランスを取りやすくなり,人の頭部の動きを大幅に減少させた結果を示す。

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