マツダ技報 2022 No.39
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 CX60は,人間のバランス能力を発揮できる車両運動を実現し,修正操作を最小化することで,誰もがストレスなく運転を楽しめることをコンセプトとしている。*4,5  電子基盤開発部 ―74―1. はじめに2. 目指す姿included in the lineup features improved environmental performance with which more deceleration energy is recovered than the conventional M Hybrid. The regenerative-friction brake coordination system is adopted to recover the deceleration energy. For the first time in Mazda, regenerative-braking is coordinated with i-ACTIV AWD to achieve more stable AWDspecific driving performance and natural brake pedal operation feel.coordination, Brake-by-wire, Energy regeneration, Motion controlChassis Dynamics Development Dept.Shigehiro TanakaYasumasa ImamuraElectronic Platform Development Dept.Yuta TangoTaku YoshidaDaisuke UmetsuKey words:EV and HV systems, Vehicle dynamics, Plug-in hybrid, Regenerative-friction brake CX60の回生協調ブレーキにおけるダイナミクス性能開発Development of Vehicle Dynamics in Regenerative-Braking of CX60特集:MAZDA CX6012 昨今のCO2規制をはじめとする環境規制への対応や環境負荷の低減のため,自動車のエネルギー回収技術は重要度を増している。マツダは,商品ラインナップに電動化技術を段階的に導入し,これらの規制対応と更なる環境性能の向上を進めている。2019年には,M HybridをMAZDA3に搭載し,そして今回市場導入したCX60には,e-SKYACTIV PHEVを搭載してエネルギー回収能力を更に向上させた。 エネルギー回収は,ジェネレーターを用いて,減速時に車両の運動エネルギーを電気エネルギーへと変換し,バッテリーで蓄電することで行われ,この仕組みを回生ブレーキという。回生ブレーキによって得られる減速の強さは,ジェネレーターの回転数やバッテリーの充電状態等によって変動するため,回生ブレーキだけではドライバーが意図する減速を実現することはできない。そこ*1~3  操安性能開発部 要 約 ラージ商品群の第一弾として,CX60を発売した。マツダ初のプラグインハイブリッドモデルをラインナップし,従来のM Hybrid(24V マイルドハイブリッド)に比べて,より多くの減速エネルギーを回収し,環境性能を向上している。減速エネルギーの回収には,回生協調ブレーキシステムを採用した。回生協調ブレーキは,マツダとして初めて,i-ACTIV AWDと協調制御させ,AWDならではのより安定した走りと,自然なブレーキペダル操作感を実現した。AbstractMazda launched CX60 as the first product of the large platform line-up. Mazda’s first plug-in hybrid model 田中 繁弘*1丹後 佑太*2梅津 大輔*3今村 泰理*4吉田 琢*5で,マツダは回生協調ブレーキシステムを採用することで,エネルギー回収とドライバーの意図に忠実なブレーキ操作感を両立している。回生協調ブレーキは,ドライバーがブレーキペダルを踏むと,必要な減速をシステムが判断し,制動力を回生ブレーキと摩擦ブレーキへ最適に配分することでドライバーが意図する減速を実現するシステムである。 一方で,回生ブレーキは主駆動輪に制動力が偏るため,本来4輪に適切に加わるべき制動力のバランスが崩れ,車両ダイナミクスへ影響を与えてしまう。本稿では,回生協調ブレーキによるエネルギー回収と車両ダイナミクス性能を両立する制御について解説する。

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